「好きな季節はいつですか?」と聞かれるといつも「冬」と答えている。僕自身が冬生まれであることもあるのだが、冬は世界ぜんぶ静かで、そしてなんだかさみしい感じがして、落ち着くのだ。
宮嶋風花監督の商業デビュー映画『愛のゆくえ』。この映画でも冬の真っ白い雪のシーンの中で、メインとなる愛と宗介が度々描かれる。しんしんと雪の降り積もる音さえも聞こえそうな静寂の中、そこに人がいる証として、雪道を歩く時特有のきゅっきゅっという音だけが映像から聞こえてくる。
そんな描写がこの映画のすべてを物語っていると思った。白銀のしずかな世界でたった二人だけの生きる痕跡の音が響くような繊細さと、でもそれでいてどんなに息を潜めても漏れ聞こえてしまう存在主張がそこにはあった。自分の世界が大きく変わった時に直面した、14歳の少年少女の気持ちが素直に表現された作品だと思った。
雪道を歩くと必ず跡ができる。この映画もそうだ。映画を見た人の中には、きっと彼女らの足跡が残されているのだろう。
だから本作はタイトルにある「愛のゆくえ」とは、行方の先にあるゴールや目的地の話ではなくて、そこまでの足跡の話なのだなと思った。