「悪魔の証明」とは、一般的に「〇〇でないこと」を証明することが困難であることを示す言葉として使われている。例えば、「太郎くんが有罪であること」を示すには犯行に使われた凶器などの証拠があれば良いが、「太郎くんが無罪であること」を示すのはかなり難しい。(そのため、法律の分野では被告人の無罪を前提とした上で有罪であることを立証するというアプローチがなされている)
映画『悪は存在しない』はまさにそんな「悪魔の証明」の映画を示した映画である。
本作は、とある田舎町で暮らす人々とその町でグランピング上の開発を行おうとする芸能事務所との対立を中心に物語は進んでいく。そのようなあらすじと作品のタイトル「悪は存在しない」を聞くと、どちらにも立場があり、仕事があり、悪気があってやっている人はいないよなぁという感想になるのだが、本作はさらにその先を示している。
つまり、「悪は存在しない」ということを証明することはできないという物語なのではないかと思わざるを得ないのだ。