USB Type C大統一時代
USB Type C、もはや究極のなんでも直流電源となってますよね。ようやくmicroB…そしてLightningも息絶えてきて世の中いいかんじにType C大統一時代となりつつあります。
そんななか、旧来のACアダプタと電源コネクタを使っている機器もまだ微妙に、いやほんと、びっみょーーーーにあちこちに残ってたりします。こういう機器を持ち運ぼうとしたり、電源まわりを整理しようとすると地味にけっこうめんどくさい。
そんなときに活躍するのが通称トリガーケーブル。Type Cは電源アダプタ側が対応していればさまざまな電圧が出せるようになっているので、「おいお前、いいからこの電圧(電力)で出せやコラ」という指令(トリガー)だけ出すチップを内蔵した電源ケーブルをつくればいろんな電圧のアダプタがわりにできるんですね。こんなやつ。

こういうケーブルを必要な機材ぶん用意しておくと、あらゆる電源をType Cにまとめられてとてもべんりなわけです。
汎用トリガーアダプタ VFLEX
でもまあ、毎度毎度必要な電圧向けにあらたにトリガーケーブル手配するのもかったるいっちゃかったるい。…というときにとても便利そうな!あらたな!デバイスが!!

「Power Everything with USB-C」!このキャッチコピー、いいですねえ。今回、このデバイス「VFLEX」のサンプルをお借りして使ってみたので紹介してみる次第です。
これは何か。つまりは先ほどトリガーケーブルの説明で出てきた「おいお前、いいからこの電圧(電力)で出せやコラ」という指令(トリガー)を出す部分。これだけを切り出して、好きな電圧の指示に書き換えることができるようにしたアダプタ、です。
これをPCに繋いで専用の設定サイトを開くと、ACアダプタに送信する電圧指示を自由に設定できます。設定自体はUSB MIDIのプロトコルを使用しているみたいで、ブラウザからUSB MIDIを使って設定します。アプリをインストールしたりする必要もまったくなく、WindowsでもMacでも設定できるので超お手軽。

たとえばこんなふうに15.00Vに設定するだけで…


Type Cの電源アダプタを15Vの電源として使えるわけです。べんりですね!(※ここで電圧を表示しているのはVFLEXには含まれない、別の製品です)

このように、VFLEXが自由な電圧をトリガーして、その先のケーブルは自由に差し替えられるようになっている。そのためあらゆる機器に対してType C/USB PDで電力を供給できまっせ、というのがこの製品のコンセプトなわけですね。
とはいえけっこう玄人向け
と、ここまで聞くと超べんり!ってなもんですが、いくつか注意があります。
どんな電圧でも設定できる=機器に過電圧をかけるリスクがある
どんな電圧でも設定できるってことは、イコール機器が求める以上の電圧も誤設定でかんたんにかかってしまう、という話でもあります。5Vを要求する機器に20Vなんてかけたら簡単にぶっ壊れますし、それを防止する機構はありません。適正な電圧を設定して適正に運用する責任は利用者側にあります。
さすがに正極負極は固定で、ケーブルごとに決まっています。ほとんどはセンタープラスで、よくある楽器用サイズ(楽器用の9Vアダプタ)だけセンターマイナスに固定されています。上記写真のオレンジ色のやつ。なのでプラスマイナスの逆接はほとんどないはずですが、それも含めて利用者責任なので「簡単に機器を壊せるものである」ことは強く留意する必要があります。
Standard, PPS, Extended, 対応電圧…
VFLEXはあくまでも「こういう電圧で電力くれよな」と電源アダプタ側に指示するだけなので、その指示を受けて該当の出力を出せるかどうかはアダプタによります。このあたりはUSB PD (Power Delivery)がどういうものかを知らないとけっこう罠を踏むかもしれません。
たとえば…


15Vで設定すると、見ての通りUI上は「Standard」のところが点灯します。そしてこの設定したVFLEXをアダプタに繋ぐと冒頭で示したとおり15Vが出力されますが…


12Vに設定すると、LEDが赤く光ってエラーとなり、5Vが出力されてきました。あれえ?

これは何故かというと、ここで繋いだUSB C対応電源アダプタが「12V出力」に対応していなかったからなんですね。製品の裏を見てみると
USB-C Output/出力 : 5V 3A / 9V 3A / 15V 2A / 20V 1.5A
と書いてある。そう、このアダプタは、15Vは出力できるが、12Vは出力できない…のです。
さらに言えば「USB-A+C Output/出力」のところを見ると、このアダプタはUSB AとCを同時に出力するときはUSB C側は5Vか9Vしか出力できず、15V/20Vは出力できないことが示されています。
え?本当でしょうか?
動画を見ていただければわかるとおり、USB C単体では出力できていた15Vが、USB Aにデバイスを接続した瞬間にエラーになり出力不可になることがわかります。本当なんですねえ。
これはVFLEXがというよりも元のアダプタがそういう仕様であり仕様通りに動作しているというだけにすぎないので、つまりは使おうとしているアダプタがどういう仕様なのかを理解して使わないと期待した挙動にならないということなのです。USB PDはどういう挙動をするもので、使おうと思っているアダプタがどういう仕様なのかは正しく知っておかなければならないのです。

たとえば16Vといった中途半端(?)な電圧を指定すると「PPS」という表示が点灯します。これはPPS (Programmable Power Supply)というオプション規格を使用する電圧であることを示しており、PPS対応のアダプタでないと動作しない、ということを意味しています。

なのでこの設定だと出力自体は無敵の強さを誇るAnker Prime Charging Stationでもエラーになっちゃいますが

Xiaomiのモバイルバッテリー(165W Power Bank 10000)では出力できたりするわけです。
こういうふうに、どの電圧設定だとどのアダプタで、どういう条件なら出力できるのか…というのはぱっと見はなかなか掴みにくく、詳しい仕様を把握して使わないと使えなかったりなど思わぬ罠を踏みます。そういう意味ではVFLEXは非常に、非常に玄人向けですね。
でもVFLEXマジで便利
でも、VFLEXならまあなんとかなるといえばなんとかなるのも事実。
たとえば冒頭で示したLEDクロックでは…

電源入力は12〜24Vと指定されていたので
最初は12Vで指定してみた
あ、このアダプタ12V出力対応してないじゃん→じゃあ対応している15Vを指定しよう
もっと広く対応されている9Vでもいいのでは?→なんだ動くじゃん、じゃあ9Vでいいか
みたいな試行錯誤で電圧を設定したりしました。そういう意味では、単一の電圧に固定されている従来のトリガーケーブルとは違い、手元の電源アダプタや対象の機器が受け入れられる電圧にあわせて柔軟にその場で最適な電圧に変えられるというのはVFLEXの大きなメリットかもしれません。
Kickstarterでクラウドファンディング中
このVFLEX、冒頭でも紹介しましたがいまKickstarterでクラウドファンディング中です。興味のあるかたはbackを検討してみてください。

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あとこういう遊びをするときは、USB Cの電流電圧計を持っているとなにかと便利です。ひとつもっておくといいですよ。