ウェアラブル・コンピューティングの夢

MIRO
·

まだまだコンピュータがでかくて重くて、机の上で使うものだった時代。コンピュータを身体に装着することで、日常のあらゆる場面でコンピューティングパワーを活かせないか、という概念、すなわちウェアラブル・コンピューティングという研究がありました。

いっぽう、いまやスマートウォッチを身につけ、スマートフォンを常時携帯し、5Gで高速インターネットに接続されているわれわれです。もはやみんな当たり前のように高性能コンピュータを身にまとい、無限のデータに常時接続されています。あれ、これってウェアラブルコンピュータじゃん。というわけで、あらためて「ウェアラブル・コンピューティング」などという言葉を使うこともなくなってしまったわけです。当時の「未来」は、いまや日常に。

でも、なんかこう、スマートフォンをさわさわ触るんじゃなくて、もっと、コンピュータと、そしてインターネットと、こう、ダイレクトにつながりたいんですよ。一体になりたい。視界に、ダイレクトに情報を出したいし、つながりたい。昔の「ウェアラブル・コンピュータ」の形に、こだわりたい。

なんでって?そりゃ、かっこいいから!

…なんて気持ちはずっとくすぶりつづけています。今日は、そんなわたしの中二病の源泉がどこからきているか、という話。

冒頭に挙げた写真のおじさんは、Thad Starnerというひとです(ちなみにこのおじさんはその後Google Glassをつくったりします)。これは2000年ごろの写真。左目の瞳孔の前に白く光った四角が見えますが、じつはこれディスプレイで、画面が見えているんですね。え、まるで普通のメガネじゃん!すごい!かっこいい!萌える!

このメガネ型ディスプレイは、MicroOptical社製のIntegrated Eyeglass Display Model EG-7。マジで憧れの逸品。メガネ内蔵のこのタイプはすべて特注・受注生産だったのと50万円くらいしたのでうかつに手を出せる代物ではありませんでしたが、既存のメガネにクリップオンするタイプのいわゆるスカウタータイプのディスプレイもあって、そちらはまだ手が出せないこともない、という感じでした。たしか23万円くらい。

この写真上段、向かって左から二番目にThad Starnerがいて、なにか握っているのが見えますね。これがキーボード。Twiddlerという片手キーボードで、一般的な小型QWERTYキーボードと違い、手元を見ることなくタッチタイプで、デスクトップキーボードに近い、ないしは凌駕するタイピング速度が実現できるとされています。つまりこの姿で立ったまま画面が見えてキーボード叩けるんです。いや、もう、これが「「「未来」」」じゃん。

そう、「24年前」でもこんなすてきな世界が実現していたんですねえ。このウェアラブル・コンピューティングの未来感、世界観は、当時の一部のテックオタクの心に突き刺さり人生を狂わせました。ぼくこれほしい。これやりたい!

はい。そんなわけで、20年前。わたしもこれをなんとか自前で、かつお小遣いの範囲でやってやろう、と奮闘していたのです。そんな当時の日記「ウェアラブル奮闘日記」がのこっています。日記のはじまりは2003年7月3日。初っぱなから「Thad StarnerがつけてるMicroOpticalのディスプレイ欲しいけど高すぎて買えないから別のコンシューマ向け単眼HMDを買ってウェアラブルコンピューティングやるぞ」という話から始まります。まんまです。

で、そのあこがれのMicroOptical社製のディスプレイ。この日記のさらに1〜2年前に、一度借りて試したことがあるんですね。

当時はまだ身につけられるコンピュータの選択肢がなかったので、ポータブルDVDプレイヤーを接続して通勤中に映画を見る、というのを実践しました。これがちょうたのしかった。「移動中に動画視聴をすることで移動時間を有意義に使う」というのはすごくすごく素敵な体験だった。

…という経験が、その後「携帯動画変換君」の開発にダイレクトにつながっていくのですが、それはまた別の話。

まあ、そんなわけで

ぼくがなんやかやとうっすら延々こだわりつづける「片眼HMDと片手キーボードによる、ウェアラブルコンピューティング」という夢。Thad Starner超かっちょいい、ぼくもあれやりたい、というのがそもそもの出発点であり原動力でありどうしても忘れられない原点であるというわけです。

どれくらいこだわっているかというと、先ほどあげた「結局その原点から携帯動画変換君につながっている」というのもそうだし、blogに限って言っても

とまあ無限にこのテーマが出てきます。好きなんだよ!わるいか!!!

キーボードのほうはどうする

ディスプレイにくらべて、ちょっとぱっとしないウェアラブルキーボードのほう。もはやスマホでフリック入力するか、音声入力したほうがはやいし確実です。当時とくらべて、音声認識もめっちゃ精度あがったし実用的だもんね。

でも、みなさんはもうおわかりのはずだ。ぼくがやりたいのはそうではないのだ。

とまあ、こんな感じでさいきん腕に装着するキーボードをつくってみたりはしました。ロマンです。が、やっぱりタイピング速度はいまひとつ。

と、おもっていたら…

Twiddler 4 - By Tek Gear (mytwiddler.com)

Thad Starnerもつかっていた、あの片手キーボード「Twiddler」が、まさにいま、バージョン4となって、製品化されようとしているではないか!!!

ウェアラブルコンピューティング用のキーボード、というプロモーションではなく「配信しながら自在にOBSを制御できるストリーマー向け片手デバイス」という売り方をしているのがイマドキだなあ、と思いますが製品自体はまごうことなきTwiddlerです。Twiddlerの独特なキーバインドを練習するためのタイピング練習ツールもWebベースになって生まれ変わっています。マジか、すごいぞ。萌えるぞ。

20年前当時は、じぶんのお財布事情からウェアラブル用の片手キーボードに3万円はなかなか出せず結局買えなかったのですが、大人(おじさん)になった今なら買える。あのTwiddlerが、現代の実装で、手に入る!!!!

というわけでポチってしまいました(※Twiddler 4は公式にはまだCOMMING SOONで未発売ですが、なぜか買えた)。はたして自分はTwiddlerキーバインドを覚えることができるのか、練習すればなんとかなるものなのか(そしてもう加齢で覚えきれないのか)はまた後日レポートしたいとおもいます。

まあ、なんというかあれですね

三つ子の魂百までといいますか、みんなこういう「若いときにやられてしまってその後ずっと追い続ける羽目になった人生のテーマ」ってありますよね?はい、見てのとおりぼくはあります。ウェアラブルコンピューティングと、ギャラクシアン3(没入体験)。どっちも結局今の仕事(VR)につながってるんだから因果なものといいますか、ねえ。

@miro
おもしろいものをつくりたい