
3月下旬、Xでポストの自動翻訳機能が追加され、タイムライン上に各国のポストが混じって表示されるようになりました。そしてそこで起こったのが日米食べ物交流というか、米国のBBQ写真に対して「すげーー!!」という感嘆の声が溢れる飯テロタイムライン。
ここで我々は学びました。
日本の「バーベーキュー」と、アメリカのBBQは、違う料理である。
特にテキサスBBQと呼ばれる、テキサススタイルのもの。これは、肉を焼く…と見せかけて、10時間以上もじっくり低温で加熱することで肉の成分を変性させる、仕組みとしては煮込み料理に近い料理である、ということを知ったわけです。
知ったからには、食べてみたい。
食べてみたいから、作ってみたい。

でも、テキサスBBQは、バーベキューグリルを使って10時間!も火をくべひたすら焼き続ける料理です。日本の、しかも東京のこの兎小屋ひしめく住宅事情。いったいいつ、どこで、そんなことができるというのだろう…?(画像は米国食肉輸出連合会によるAMERICAN BBQガイドブックより)
テキサスBBQを、家庭用電気オーブンレンジで再構成する
しかし、絶望してはいけない。ここに神のnoteがある。皆これを読むのだ。
テキサスBBQを、家庭用オーブンで、つくることが、できる…!?
テキサスBBQは、Barkと呼ばれる黒い層(肉の脂分とスパイスとスモークの香りなどが固まり旨みが凝縮したレイヤー)と、長時間加熱されることで筋の部分がゼラチン化し柔らかくなった肉が渾然一体となった状態が特徴です。そこで、その状態に至るためのプロセスを
バーベキューグリルでひたすら燻製しながら、煙で加熱しつづける
から、
家庭用オーブンで一定の温度で加熱しながら、スモークリキッドで水分と煙相当の香りを吹き付ける
に再構成したわけです。すごい。神。
材料を用意する

というわけでつくってみます。元のnoteでは和牛ランプを使用していましたが、今回は牛バラ肉の塊を使用。近所に「バリッバリの肉の卸ではあるが、直接行って頼むと小売もしてくれる」素敵なお店があることに気がつきまして、そこで買ってきました。みなさんも探すと近所にそういうところがあるかも…?ちなみに2kg用意しました。

ほかに用意したのは
スモークリキッド
霧吹き(100均に売ってます)
マスタード
ガーリックパウダー
塩胡椒
砂糖
バーベキューソース
詳しくは元のnoteを読むのだ。一番手に入りにくいと思われるスモークリキッドはこちら。100mlで足りるのか?と、量の感覚がよくわからなくなりますが、めちゃくちゃ足ります。大丈夫。
あとマスタード。これが、意外と日本のスーパーに売ってないです。イトーヨーカドーとかイオンとかの大規模スーパーに行きましょう。自分は手近なスーパーで粒入りマスタードしか売ってなかったので今回それを使いましたが、正直これはいまひとつでした。粒が邪魔。粒がないマスタードを大量にしっかり塗り塗りしたほうがいいです。
それと最後にバーベキューソース。これは材料というより食べるときに使うのですが、「バーベキューソース」も日本のスーパーにはなかなか売ってないです。私は以前ブリスケット(調理済)を買ったときについてきたミートガイさんのBBQソースをそのまま使いましたが、いざ作って実食するとBBQはあくまでもBBQであって焼肉ではないことを痛感します。そう、日本のスーパーで売っている「ステーキソース」や「焼肉のたれ」ではなく、「バーベキューソース」がやはり合うのですよ。「バーベキューソース」を用意したほうが幸せになれますので用意しておきましょう。
塗る

マスタードを下地に、RUBと呼ばれるスパイスを塗り込みます。マスタードがちゃんとなかったこともあってだいぶおとなしめになってしまいましたが、これはもっと大量に塗ったほうがよかった。反省です。通常は肉が見えなくなるまで塗るそうです。
このRUBに砂糖が入るのがけっこうポイントだと思われます。味もそうだし、糖分がおそらくBarkに効いてくる。自分はこれまで塊肉でローストビーフなりの調理をするときにはあまり砂糖を使うことがなかったので、このへんが新鮮でした。なるほどー!
家庭用オーブンレンジ、130度、6時間(前半)

ここまでできたら、家庭用オーブンレンジに突っ込み、130度設定で6時間です。なお、家庭用オーブンレンジを使う場合は、オーブンレンジ、すなわち電子レンジも兼ねる機械なわけで。これをほぼ丸一日専有することになるので「電子レンジが1日使えなくなる」ことについてあらかじめ家族の理解を得ておきましょう。土日とかだと…地味に…昼頃のそのそ起きてきた子供が…冷凍食品を食べたい、と言い出すなどという事故が…
前半の6時間はBarkを形成させるのが主目的。30分〜1時間ごとにスモークリキッドを霧吹きで肉の表面に吹きかけます。これで肉の表面に水分を補給+糖分を補給+スモークの香りを補給し、Barkを作らせていくわけですね。「30分〜1時間ごとにメンテする必要がある」ということで、今回一番手間がかかる(とはいえたまにシュッシュするだけですが)のがここまで。

そして6時間経った状態がこれ。しっかりBarkができてますね…!
家庭用オーブンレンジ、130度、6時間(後半)

次にテキサスクラッチです。一度肉を取り出して、アルミホイルで包んであげます。ここから先は包むことでさらに肉の芯温を上げ、コラーゲンの変性をうながします。かつ、それにともなう乾燥を防ぐという効果があるとのこと。
包んだ上でもう一度オーブンレンジにつっこみ、130度、6時間。あとはスモークリキッドの吹きつけもなくほっておきます。ただただ待つだけ。火の番とかしなくていいのは本当に楽ですね(ただ、家庭用オーブンは一度に「6時間」という設定ができなかったりするのでそういうときは2時間ごととかに時間を再設定する必要がありますが)
完成
信じられないほどぷるんっぷるんに柔らかくなった、そして表面はバリバリのBarkが形成された、「これが…テキサスBBQ…!」という肉塊が完成…しました…
動画を見てください。持ち上げようとするとプリンのように波打つ肉塊。ぷるんぷるんと揺れる柔らかさ。やばい。やばい。やばいしか言葉がでない。マジでやばい代物です。
これが「正解」である



「知らない料理だ、食べてみたい」という動機で作り始めたわけですので、自分は「これが正しいテキサスバーベキューである」という「正解」を知りません。が、完成してみると、明らかに、「これが正解である」というのが肌でわかります。柔らかさと香ばしさが同居した、この工程でしかなしえない形態。そして、なによりも、うまい。すごい。肉ってこうなるんだ…。
完全にゼラチン化し極限まで柔らかくなった肉塊が、「煮込み料理に近い」という知識を補完し圧倒的な納得感をともないます。そして、表面のBarkと、スモーキーな香りが「しかし、これは煮込み料理ではないのである」という答えを教えてくれるのです。な、なるほど…!という、すべてをなぎ倒す説得力がここにある。
自分はまずはレシピ通りに作ってみたし、「バーベキューグリルではなく、家庭用オーブンレンジを使った手抜きアレンジ」ではある。が、これは確かに工夫をこらしたくなるよなあ、わかるわ…という物語の入口は垣間見えました。
これはたしかにハマる。そして日本の「バーベキュー」とは全く異なる、別の料理である。ホストが、さまざまな工夫をこらし、自分なりのスタイルを確立し、時間をかけて用意し、ゲストに振る舞う。圧倒的なハレの料理。そして、歴史と知見が積み重なった、文化が確かにここにある。
まあなにはともあれ、私は来週にでもブリスケットでもう一回つくります。件の食肉卸のお店にはブリスケットの仕入れをお願いしてしまいました。これは、ハマりますわ…。