生まれかわったら

mirushika
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最高におもしろくって見終わってから、できることなら記憶を消してもう一度見たいと思う作品がある。反対にあんまりピンと来なくって、生まれかわった先で見たらおもしろいだろうなと思う作品には何があるだろう。一番最初に思いつくのは『旅の重さ』。これは1972年の日本の映画で、家出した16歳の少女が四国でお遍路さんの旅をしながら人々とふれあい、成長していくロードムービーだ。1972年(昭和47年)の四国の旅情あふれる風景、体当たりでぶつかる少女の瑞々しさ、三國連太郎や高橋悦史ほか実力派俳優の名演技に加え、エンドロールでは吉田拓郎の『今日までそして明日から』がエモーショナルに流れる。いい映画だと思う。でも、オーディションで選ばれたという主演女優の演技がとんでもなく下手で、どうにも入っていけない。あれさえなければと、今でもたまに見たくなる。けどやっぱり集中力がなくなって、途中で見るのをやめてしまう。だから日本から遠く離れた文化圏に生まれて、日本語も全く理解できなければたぶん面白いんじゃないかなと思っている。すこし昔の、遠い文化圏の風土を感じながら主人公と一緒に旅する映画って、いいじゃん。好みの問題だけど。そうでなくてもっと素朴に、風土を感じたくて映画を見るときがある。私はそういうとき、中央アジアの映画を見ることが多い。あと中国映画も。町の景色が見たくて見てるところもある。中央アジア圏の男はね、大勢の前でもすごく清らかに泣くんだよ。東アジアには大人の男の涙って大っぴらには見せないみたいな価値観があるから、ここぞとばかりに泣くシーンがある映画も多い。けどモンゴルやキルギスの映画に出てくる男は、何の恥じらいもなくみんなの前でするっと泣いて、慰めてもらったりする。こういう、今まで知らなかったニッチな価値観の違いを見ると、違う文化圏~~って楽しくなる。あれ、なんの話してたっけ?