『道』を見た。映画の途中、ジェルソミーナが海へと走るシーンがある。母親に売られ、生まれ育った海辺を離れて旅芸人として暮らしているジェルソミーナ。久しぶりに海を見て、弾けるように走っていく。映画の内容に自分を重ねることはあまりしないようにしてるんだけど、私が海へ向かうときもあれくらい気持ちが溢れていたんだろうかと、少し気恥ずかしくなってしまった。それくらいジュリエッタ・マシーナの演技が素晴らしかったし、それくらい海のことがまだ恋しい。
ジェルソミーナはザンパノの孤独をわかっていたし、自分の孤独もある程度はわかっていた。けれどザンパノは自分の孤独にも気づいていなかった(気づかないようにしてきた)。ザンパノの海辺での慟哭には、気づかないようにして生きてきたたくさんのもので充ちている。