本当の水平線を見てから、なんか少しおかしい。水平線が後頭部に張りついているみたいで、ふいに思い出してしまう。本当の水平線はギザギザのでこぼこで、至る所に波が蠢いていたし、線でもなかった。私がそう信じていたものは、ある地点から見える地球の限界。線そのものは存在しない。わかっているはずなのに、水平線の蠢きを見てから、なんか不安。あの蠢きや、海の果てまで海が続いていることを、"本当に"理解するのって、もう狂ってもおかしくないくらいに恐ろしいことなのかもしれない。水平線だけじゃなく、なにかの存在を"本当に"理解するって狂気に満ちている。けど、視力がよすぎる私しか見えてなかったし、あの蠢きは幻だったのかも。今となってはもうわからない。