冬の休暇を海沿いの町で過ごした。海以外はなにもなくて、海があるからどこよりも素晴らしい町だった。浜辺まで歩いて数分。前に来たときに見た朝日の美しさが忘れられず、子どもみたいに早起きしては毎日のように朝日を見に行った。日の出のまえの、濃密なあまいあまい桃色の空。夜のあいだ、どこかで焚火をしていたらしい。薪の燻る匂いがする。寄せる波と引いていく波がぶつかっては打ち消しあい、波打ち際でシュワシュワと音を立ててしぼんでいく。なんどもなんども繰り返す。終わりがない。怒号がして顔を向けると、大きな波が砕け、すごい速さでこちらへ近づいてくる。波打ち際ぎりぎりでぼんやり立っていた私は慌てて転んでしまった。濡れた砂浜に思いっきり手をついた。軽く手を叩いても、濡れた砂はぜんぜん取れない。乾くまでそのまま。海を見た。