水平線

mirushika
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水平線を初めて見た。いや、水平線を見たことはあった。でもこれまで見た水平線は、いつも霞んでいた。ぼんやりともやついて、空と海の境目の辺りをはっきりと見たことはなかった。毎日のように海に通っていると、すっきりと視界が晴れ渡る日がある。冬は特に。東京にいるときなら、富士山や遠くの山々がくっきり見えたりする。今は山がない代わりに海がある。初めて見た本当の水平線は、ギザギザで、でこぼこしていた。見渡せる世界の端まで海は続いていて(海で埋まっているとも言える)、いたるところに波がある。白い泡を立てて、迫り上がっては消えて、また別の波が来る。水平線の、空と海の境目辺りも同じ。ずらずらと波が走り回る。水平線は本当はギザギザで、でこぼこと蠢いている。