チョコレートが最近あまり好きではない、ということに気づいた。歳だろうか。昔はこの時期百貨店のバレンタイン催事のバイトに入る程度に好きだったのだけれど。
この時期はチョコレートがよく売れる。2000年代に入ってからは「受験菓子」としてキットカットをはじめ「手を汚さないブドウ糖摂取源」として市販のチョコレートもコンビニでよく売れるようになったため、1月~2月の製菓市場はチョコレートの寡占状態である(もっとも近年の受験生にはウィダーinラムネ味が人気のようだが。)。
考えてみれば、よくできた戦略だ。バレンタインも受験も「たまたま」この真冬の時期に設定されてはいるが、販売者からすると真冬はチョコレートが溶けない「売りやすい」時期だ。真夏にチョコレートを売ろうとするのは愚策だし、塩飴や経口補水液でも売っていた方が儲かるに決まっている。
「元」チョコレートガチ勢としてバレンタインに外れのないチョコレートの選び方をいくつか例示しておく。異論は受け付ける。
・前提:チョコレートは本当に手間のかかる菓子である。
チョコレートはケーキやクッキーのような生温い工程で生まれるものではない。原料の豆の調達がまず難題で、そこからロースト、カカオニブの分離、磨砕してカカオマスにし砂糖やバターを加え、精錬をして、テンパリングで緻密に温度を調整しつつ冷却してようやく形になる。国内に単独の店舗を構えられるショコラトリーは大抵自前の工場を持っていて、私は工場レベルでチョコレートを見ている。
というわけで、工場が日本にないショコラトリーはそもそも味付けが日本人向けではないことに留意するべきだろう。百貨店の催事でしか出てこないブランドとか。
有名なのはドラマ版「失恋ショコラティエ」に一部協力した町工場発のショコラトリー「CHOCOLATE BRANCH」だが、こちらはコロナ禍で休業中。厳しい時代である。
で、何が言いたいかというと、チョコレートはショコラティエではなく工場で決まるため、独自工場を持てるレベルのブランドを選ぶのが安牌だということである。
ただ、これはチョコレートの話であってケーキとかは無論例外だ。
(補足:ビーントゥバーについて)
工場にこだわるなら当然豆とその流通経路にもこだわりたい。そういった思想から生まれたのがビーントゥバーで、国内ではピエール・マルコリーニとミニマルの二強だろうか。個人的にはミニマルは国内のショコラティエで一番好きだが、「バレンタインに贈りたいか」と言われると尖りすぎていて話は別だ。
https://www.sunwood.co.jp/sunwoodclub/webmagazine/magazine_201801.html
個人的にはここのトリニダード・トバゴの豆のチョコレートが本当においしいと思っているし、正直なところ一般的なボンボンショコラのオランジュやベリーなどの「味付け」には飽きてしまった。
ただビーントゥバーは小規模な工房での生産が主なため、「一定した味を出すのが難しい」という欠点が存在するのも事実だ。ラ・メゾン・ドゥ・ショコラといった老舗メゾンも「生産地ごとに分けられたバー(板チョコ)」を1枚1300円くらいで売っているが、これは「この銘柄の味は『これ』」ときちんとブランディング・差別化されるように、あえて工場側で味を一定にする工夫を行っている。好みは人それぞれだが、こうした企業努力が特定の高級ブランドへの固定客をつかんでいる(食べ過ぎて飽きが来ることも否定はしない)。
https://mimt.jp/blog/official/2351/
・チョコレートと包装
この時期やり取りされるチョコレートの価格帯は一粒300~500円くらいが主だが、ここに上乗せされるのが包装である。
どうせ誰かに贈るならお洒落なものをと思っているならブルガリ一択だろう。
https://store.shopping.yahoo.co.jp/dandelion-onlineshop/11-013022-blg001.html
一粒3000円越えのジェムズは自分用に一回買ったが、普通に包装だけで元が取れている。チョコレート自体はだいたい一粒1200円くらいで、これを高いと思うか値段相応と思うかは人次第だが、個人的にはいいチョコレート体験だった。というか、高級メゾンでチョコレートを売っている人は大体本命にブルガリを送るようになる。
・催事場のおすすめ
正直あまり詳しくないし、催事場で買いたいと思うブランドはだいたいデパ地下か路面店が存在するので何度行っても行く意味を感じない……が、一度東京が超吹雪の日に三越に行ったらガラ空きで、当時朝10時代には売り切れるブランド「イヴァン」が夕方になっても売れ残っていたのは本当によかった。店員さんも暇そうにしていて普通に話が盛り上がったので、同じ苦労を買うなら行列より吹雪の方が良い。
・チョコレートのペアリング
コーヒーが安牌だと言われているが個人的にはホットミルク、アッサムあたりも嫌いではない。赤ワインやウイスキー、日本酒が合うと言われがちだが、酒よりチョコにこだわる超高級店だとスパークリングロゼを合わせることが多い。
・結論
路面店で買うべき。路面店は常に空いてる。
ピエール・エルメ
https://www.pierreherme.co.jp/
ラ・メゾン・デュ・ショコラ
https://www.lamaisonduchocolat.com/ja_jp
ミニマル
ピエール・マルコリーニ
サダハル・アオキ・パリ
ヴェンキ
デメル
フレデリック・カッセル
https://fujingaho.ringbell.co.jp/shop/g/g058F-430/
フォション
https://www.takashimaya.co.jp/shopping/product.html?p_cd=0002248789&sub_cd=001
こんな感じかなあ……。