小学校を卒業するまで暮らしていた家からは徒歩数分で図書館に行くことができた。
生まれつき身体が弱かったことと家庭内がボロカスだったため遊びに出る気力もなく、横になりながらひたすら図書館から借りてきた本を読んでいた。わたしが心からのびのびとできる空間は児童文学の世界だけだった。
そんな中で出会った、わたしの魂でありヒーローである少女たちを紹介したい。
『ツバメ号とアマゾン号』のナンシイと、『黄金の羅針盤』のライラだ。
どちらもイギリスのお話で、二人は中身もちょっと似ている。育ちが良いのに外で泥だらけになって遊ぶのが好き、口が達者、カリスマ性と知性と攻撃性も併せ持つ、児童文学界の中ではなかなかファンキーな存在である。
ナンシイの初登場シーンから紹介すると、親戚のおじさんが自分と遊んでくれないことに抗議するためにおじさんが所有している船に花火を仕込み爆発させるところから始まる。ロックだね。こんなめちゃくちゃなことをしても大人から殴られたりしないから素晴らしい。めちゃくちゃだけど普段は白いワンピースでピアノを弾いて詩の朗読をするお嬢様なのだ(本人は死ぬほど嫌がっている) 。ただのわがままお嬢様でもなく、帆船の操縦が完璧にできる技術とカリスマ性で自然と子どもたちのリーダー的存在となる。
ライラのほうは、幼少期からオックスフォード大学の寮に住んでいて(うらやましい…)学者たちに囲まれて暮らしている。児童文学の主人公としては珍しいのだが、彼女の特技は「嘘をつくこと」。窮地に陥っても嘘をつきまくることで周囲を動かし生き延びるという頭の回転が速い上に図太い精神の持ち主だ。情に厚い面もあり、誘拐された友だちを救うため大人に立ち向かっていく姿は最高にかっこいい。
小学生のころのわたしはこの二人の熱狂的なファンであった。友達になりたい…いやわたし自身がナンシイとライラになりたい!
身体は弱くても、精神面なら変えられるのでは…と普段から意識して自分の意見を主張してみたり、人と積極的に話すよう努力した。
そして強烈に覚えているのが、高校生になったころ。突然「ナンシイとライラはもうわたしの中にいて、わたしの一部なんだ」という感覚が湧き上がってきたのだ。そのときには幼少期よりも自己主張が得意になっていて、口喧嘩であれば絶対に負けない自信すら持っていた。(攻撃的になりすぎたので後で調整したが…)
ナンシイとライラは人見知りで弱々しかったわたしを守り導いてくれたヒーローだ。ありがとう!愛しています。
イギリスで『ツバメ号とアマゾン号』と『黄金の羅針盤』の聖地巡礼をしたら、この人生の終着点としたい。