氷はお店で買うことにしている。良くないと思いつつ、都会の水道水で作る氷は受け付けないのだった。不揃いでゴロゴロした氷はなんとも愛らしい。透明で不恰好な苺のようだった。
この歳で摂食障害になった。今は比較的落ち着いているので自分を観察してみる。自分ではコントロールできない不安や焦燥感が口唇欲求として現れているようだった。欲求を抑える方法より、認めて逸らす方法が良いのではないかと思い、色々と試している。わたしにとって心地よい刺激が「氷」だった。
口の中で転がすと、つめたくて形も変わって、とろとろと溶けていく。氷は私を飽きさせないのだ。(氷を多量に食べたくなるのは鉄欠乏性貧血が考えられるけど今の所該当はしていない)
ただ、他の病気で気絶するように倒れてしまうことがあるので、氷を口に放り込むのもいかがなものかと考えあぐねていた。今のところベストなのはアイスコーヒーをストローで飲むこと。これまた病気のせいでカフェインを摂れないのでデカフェを選択している。ストローを加える行為と冷たさと苦味が、ちょうど良く口の中を満たしてくれるのだった。
ぼうっとアイスコーヒーの表面を眺めると、氷がプリズムの輪郭を見せてくれることがある。美しい光が、辛さを少し和らげてくれる。そんなとき、子どもの頃に身近に感じていた天使とか妖精とか、そんな存在に触れた気がするのだった。