バレエは人間の体に反しているらしい。
大きな苦痛を我慢し、曲がるはずのないものを曲げる。トゥシューズで立つこと自体が痛みそのもので、時には足が変形したり爪が割れたりするらしい。全部伝聞だが、とにかくあの美しさは人間の体に反抗することによって生まれるらしい。
ボクシングもそうだ。痛むときこそ前に出る。右に動こうとするならば足は左に、左に動こうとするならば足は右に向けなくてはいけない。これは『ミリオンダラーベイビー』の受け売り。
しかしこの2つの話しを思い出して、そして最近考える。人は抗う筋肉がなくてはいけないのではないか、と。それは肉体的なものでもあるし、精神的なものでもある。
時折現れる「流れに身を任せればいいんだよ」派の人。その人たちは幸運な人生を送って来たのだろうな、と思う。悪いわけじゃない。ただ自分の人生とあまりにも違いすぎるだけだ。しかし僕はそんなスマートな生き方はできなかったし、これからも許されないのだろう。
人は考える生き物だが、考えなくていいことがたくさんある。しかしそれをあえて考え、考え続ける。持ちえないほど重いものを持ち上げようと歯を食いしばる。そのときに育つものこそ筋肉。
人は確かに、現代日本のおいて流れに身を任せれば生きていける。生きることへのこだわりを捨てればどこまでも楽に生きていける。働けば少ないかもしれないけれどお金が貰え、なにはなくとも楽しく生きていける。
しかし、ダメだ。ダメなのだ、少なくとも僕は。
抗わなくてはいけない。もし人生に美学を持つのならば、曲がらない方向へ体を曲げ、痛むときこそ前に出なくてはいけない。流れに身を任せて美しくあれるほど恵まれたカードは持っていないのだから、抗え。苦痛を受け入れろ。
そんな風に最近考えたのでした。
おわり