audibleで聴いた
是枝監督がフランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴを主演にした「真実」という映画を撮ったときの制作記
是枝作品もフランス映画も好きなのでかなり興味深く聴いた
と、言っても「真実」はまだ観てないんだけど…。でも未見だからこそ、これから作られる作品として一体どうなるのか? 監督と共に未知の制作を追体験できる感じがめちゃめちゃ良かった
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全体的にはトリュフォーの「アメリカの夜」みたいなイメージを抱きながら聴いていた。監督役として出演するトリュフォー自身が「市民ケーン」の夢を3度見るように、是枝監督も制作の合間にトリュフォーやドゥミなどのフランス映画やさまざまな映画を観直していく
監督なりのフランス映画史への歴史観や、現地の撮影スタッフによる手法がロメールのような質感を形作るなどの話が面白い
前半のほうは監督の制作手記というよりは、もはやカトリーヌ・ドヌーヴのインタビュー本というくらいの熱量だった
是枝作品の中でも「歩いても 歩いても」が特に好きで、現在の大女優としてのカトリーヌ・ドヌーヴって樹木希林みたいなイメージを持っていたけど、まさに希林さんに似ているという評をしているし、どっちも1943年生まれで同い年だったと知った
ちょうどこの作品の制作に入る頃は「万引き家族」がパルム・ドールを受賞し、希林さんが亡くなった時期なのでそのへんも触れられてる
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昔、是枝作品特集を観に行ったときにトークショーがあって、そこで「歩いても 歩いても」は日本のドメスティックな家庭ドラマを描いているのに、意外と海外で上映されても共感されるんです、と言っていたことを思い出す
そのときに一番好きな映画は?と答えづらそうな質問に対しては成瀬巳喜男の「浮雲」を挙げていたと思うけど、ドヌーヴの好きな映画にも浮雲が挙げられていた
「真実」はフランスを舞台にしたホームドラマ。誰かがフランス映画って日本人の感性に近いんですって言ってた気がするけどわりとそれで自分もフランス映画好きなのかもって思ったりする
是枝監督が「アメリカの夜」を観返すところでは「僕や君みたいな人間には幸せは仕事、映画の中にしか無いんだ」とトリュフォーがレオーに語るシーンについて、ルノアールの「黄金の馬車」のラストで「舞台にしかお前の幸せはないのだ」「寂しいか?」と問われるシーンに呼応してるのだろうか、と言っていた
あと「万引き家族」についてSNSで元ネタと言われる映画が挙げられていたけど全然似てないし、それをはじめとした誤読について苦言を呈する話もあったりした
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物事には常に両面ある、という話でフランスや韓国での映画作りを通してさまざまなギャップに苦労していた
フランスでの映画製作は階級主義で是枝チームのように監督に意見する若手が横にいることはありえないらしいし、プロデューサーがクビを切ると言ったらあっさり切ってしまう
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外国映画に対する憧憬みたいなものって各人さまざまにあると思うけど、ただそれってあくまで日本に入ってきた外国作品しか観れてないので、これがフランス映画史観なのだ、と思っていてもやっぱ歪になってるんだろうなって思ったりはする。でもそれはそれで外から見た理想のイメージとして面白いのか
あとで「真実」観てみます