GTAオンラインのカスタムサーバーを使ってにじさんじのライバーたち100人以上が10日間に渡って活動するというイベントが6月下旬に行われていた
GTAなので強盗をするギャングとそれを捕まえる警察という対人戦がメインになってくるけど、ダウンした人員を回収して蘇生する救急隊や、乗り物を修理するメカニック、飲食などの販売業、キャバクラの接客業などの活動もあり、ひたすら時間が溶けそうなオンライン生活が繰り広げられていた
にじさんじについては委員長周辺くらいしか知らなかったけど、気になって観てみたらなんか妙に面白かった
開始後よく分からず近くの車に乗り込んだらそれが別のライバーで、そこでとっさにギャングと知らずについていく女子高生のロールプレイをして銀行強盗の人質役になってみたりとかいろいろドラマが展開する
で、気になって車に乗り込まれた側のほうの配信も見てみると、なるほどこういうタイミングで偶然委員長と出会ったのか、という新しい視点が獲得できるところに新鮮さを感じた
こういうのってごっこ遊びだからやってるほうは楽しくても客観的にはそんなに見世物にはなりにくいとは思う。だけどそこはさすが参加者全員がタレントなので偶発的に生じた話をなるべく盛り上げようとするし、演技力が高いので成り立ってるって感じがする
全ては茶番劇ではあるのだけれど、偶然から起きる即興劇がそこかしこで無数に行われていくところに豪勢さを感じる
特に管理者二人の視点からだといろんな人々の動向を観察して舞台の全貌が見えるのも神の目線として面白い。あとバグからの救出や相談依頼がひっきりなしに掛かってくるので大規模運営って大変なんだなと感じる
参加者一人あたりの配信が1日あたり5時間で5日間参加したとすると合計で25時間。それが100人分だと2500時間分にもなる
もちろんそんなのを全部見る人なんて居ないだろうけど、面白いなと思ったシーンについて居合わせた別の参加者の視点で見てみるとその前後にはまた別の人との絡みやイベントがあったりしてこの多角的な視点切り替えができるザッピング感がゲーム的で面白い
ゲーム内では一定範囲内に誰でも聞こえる通常のボイチャ、特定グループ内のみの無線通信、ゲーム内電話やSNSでの会話といった使い分けがあり、同じ場面に居合わせていても実はそのプレイヤー視点でしか得られない内容があったりする
このキャラとこのキャラって仲いいんだなーとか、いろんなキャラ同士の組み合わせの関係性が見れるのは興味深いし、全然知らなかったけどこのキャラの人って演技力すっごいな!とかいろいろ発見があるのも良かった(管理者星川サラさんの「はいもしもし!」という声と、エリー・コニファーさんのキャバ嬢会話術がプロっぽくて好き)
ただでさえバーチャルライバーというキャラクターを纏うことで普段から中身と演技という2つの状態があるのに、それに加えてGTA内での表向きのキャラ、裏のキャラというロールプレイの使い分けもされていたりするのも趣深い
お台場のヴィーナスフォート跡地では施設全体を舞台とした没入型の公演が行われているそうで、なんとなくそういう体験型コンテンツに近いのではないかという感じはする
キャストは公演中に部屋をまたいで移動したりするので、観客は好きなキャストの後ろをつけまわして物語の断片を追う。当然ながらそれだけでは物語の全体像まではわからないので、リピートして何度も体験したくなる。
恐山さんの日記ではちょくちょくこういうリアル参加型イベントの感想が書かれている
普通の映画や演劇などに比べたらやるほうも見る方も大変だし、一度では到底全貌が掴めない。ものすごく出来が良くてもメディアの性質的にせいぜい数千人しか体験できないのでスケールしないこの儚さについてどうしたらいいんだって言っていた
・たとえばアガサ・クリスティは小説を20億冊売り、『オリエント急行の殺人』は数千万人が読み、そのトリックに驚いている。名探偵コナンは5億部売れてる。ダンガンロンパシリーズは500万本売れている。
・発想の面白さや大胆さ、緻密さでいえば、こういった有名作品と巷の謎解きイベントの内容は全く遜色がない。「よくこんなアイデアをこんな形に落とし込んだなあ」といつも舌を巻いてしまう。なのにそれを体験できるのは、ほんの数千人。