
ちょっと話題になってて気になったので観に行った
感想はまあネタバレになるのでストーリー以外の表面的なところで言うと…
キャラクターが犬とロボット
なおかつセリフもない
つまり「性別、人種、国籍、年齢、職業、思想、宗教」みたいな厄介な概念をことごとく取り払っていて普遍性のみを抽出している
現代的~~~って思った

原作がグラフィック・ノベルということで気になったのでそっちも買って読んでみた
これを読んでみると自分が現代的~~と思ったようなことって、実は絵本の世界だと動物が主人公だったりするので元から当たり前にやっていることなんだなと改めて思った
それはつまり社会的な差別や対立といった要素は存在するし避けられないけど、子供でも読めるような物語においてはそれらの具体性はノイズになる。だからそういうところは抽象化されたり除去されることでより普遍的なドラマが際立つという感じだろうか

「ニューヨークというメガロポリスを描くには、その象徴であるニューヨーカーたちを欠かせません。背景にいるキャラクターも個性を持ち、何かしらの行動をしている必要があるのです。背景を単なる装飾ではなく、ストーリーテリングの一部として機能させることが本作の挑戦でした」
キャラクターデザインは、ダニエル・フェルナンデスを筆頭とした6名のデザインチームが担当。Illumination作品などで活躍してきた彼らが2年をかけて制作した背景キャラクターは、1000体以上に及ぶ
映画版でギョッとしてしまうのが、主役の犬とロボット以外にも街で暮らす動物キャラたちがものすごくたくさんデザインされて動いているところ
これが人間の群衆だったらバリエーションとして描きやすいと思うけど、本作では一体一体異なるタイプの動物たちなのでそれぞれにデザインやアニメーションを全部考えないといけないのは大変すぎる
「オッドタクシー」も同じく動物キャラのアニメだけどあちらはみんな主役同様に役割を持っているのに対し、本作での動物キャラたちはセリフもなくただただ本当に街の背景として描かれる。背景と言ってもちゃんと動いているし、主役もセリフが無いのだからまったくイーブンなものとして存在している
これが実写映画だったら容姿によって主役とそれ以外を区別しているだろうけど、本作においては背景の誰でも主役たりうるだろうなと感じた
映画版が原作と違うのはそうした街自体を第三のキャラクターとして描いたところ
80年代ニューヨークとそこに流れるEW&Fのセプテンバーのメロディが独自要素として物語を大きく拡張させている
そんなわけで犬とロボを主軸にしてニューヨーク愛に溢れてる作品
とにかく犬もロボもかわいい
なんだけど、これあんま言うべきじゃないっていうか感想そこかよってなるけど、完全に個人的な目線の話としてそもそもニューヨークって好きじゃないな~~~…って思ってしまった
自分は都会の密度にうんざりしてしまうし、暴力や犯罪のにおいが強いし、ガタイの良さや自己主張が当たり前に求められる。そういうのって日本に住んでると全然憧れを感じないし、もう一生共感できないなと思ってしまう
まあニューヨークは行ったこともないから、住んでみれば良いところをいろいろ感じるんだろうけど…
物語において世界の様々な土地が描かれるけど、ニューヨークに対しては自分は否定的に思ってるんだな~ということを本作で自覚した
まあいろいろ抽象化されている中でニューヨークという具体性が鼻についたのが大きいかもしれない。かつて存在したWTCへの目配せとか…(そういうのは原作には存在しないので)

ロボということで映画版ではオズの魔法使いがフィーチャーされるけど、原作では実はラピュタのロボット兵が出てたりする