侍タイムスリッパーのはなし

tamago27
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公開:2025/2/15

少し前の話だ。

話題になっていたのは知っていたが、観たのはたまたま、というか流れ、というか。前日から観よう!と決めていたわけでもなければ、観に行こうと約束をしたわけでもなかった。

友人と遊びに行った時に少し時間を持て余し映画を観るかとなった時に「今からあそこの映画館なら観られる」と調べてもらい、気にはなっていたのでまんまとそのウェーブに乗ったのである。

友人、というか、友人(と私は一方的にかなりしっかりめに思っているし好きだし信頼してるし尊敬している方、向こうもほんの少しでもいいので友人の枠組みの端っこにひっかかってくれていたら嬉しいなと思っている)だ。

観たのは池袋のシネマ・ロサ。はじめて行く映画館だった。少し年季を感じるつくり。ロマンというかレトロというか。古びた雰囲気はあれど、入場はQRコード。新旧入り混じる感覚が楽しい。階段をくだり、劇場に入って驚いた。観客がとても多い。ほぼ満席では?とは言え、思っていたらよりもフラットな客席で我々が座ったのは中央から少し後ろのあたり。見えるか?大丈夫か?という心配と、はじめての映画館でどこか新鮮な気持ちが昂揚に繋がった。いつも通りの映画泥棒が流れて実家のような安心感を覚える。

それから、映画がはじまって。

見えないかも、なんて不安はすぐに吹き飛んだ。

まず、主人公がなにかミスをして笑われる、というようなギャグシーンが挟まれないことに安堵した。それがない映画。みんなが優しくて、そして誠実だということだ。

もうそこからは夢中だった。生きた証という映画が、映画内映画という構造と相まって抱きしめたくなるような大切さが胸いっぱいに広がる。人物たちの誇りや愛、生き様、不器用なまでにまっすぐ、瑞々しく、泥臭く、時には痛いくらいに画面の中で眩しく切り取るように描かれていた。

笑って泣ける、なんて宣伝文句、本当にその通りなことあるんだ!

笑って泣いた。声を出して笑ったし、ハンカチ握りしめて顔に当てるほど泣いた。まざまざと見せつけられたと思った。人への愛を、歴史への愛を、時代劇への愛を。

愛し抜いた先にある映画を、私は観た。

ひたむきな愛で完成された映画。愛の残光を浴びる、そんな得難い鑑賞経験。オチまでたっぷりつまった、ぎゅっと魅せたいもの観たいものが過不足なく画面に広がる映画。楽しい、楽しい、楽しい!

楽しい映画、はたくさんある。でも侍タイムスリッパーは「映画って楽しい!」を手を引いて教えてくれるような映画だ。時代劇って面白いでしょう、すごいでしょう!そんな愛に溢れていた。すぐに家族におすすめしたしSNSで呟いたら監督がいちばんはじめにいいねくれた。エゴサの鬼か?

家に帰りながら、検索する。電車の中でWikipediaを読みながら、YouTubeでインタビュー動画を見ながら、ウワァ、とマスクの中で口を開けていた。

どうやら私たちが観た映画館からこの映画は封切りされたらしい。運命じゃん。

監督、仕事しすぎ。そらエンドロールで分身してるわ。貯金残り残額……う、うーん!?愛!愛がないと作れない!褒めたいけど褒められない!米農家?なんて????

アクスタ……オタクの需要わかってんジャン……

監督のエゴサ、な、なるほど、ね……

誰にでもすすめられる映画だ。私は家族と同僚とフォロワーにおすすめした。迷ったら観るべきだし、迷ってこの映画を観るべきかどうか悩む時間は人生に必要ない。みんな観て、笑って泣いたらいいと思う。

@miyata213
健康になりたいオタク