私は料理が好きではないらしい。
美味しいものを食べることは大好きだし、スーパーに買い物に行くのも好きだけど、いざ料理開始!となると途端に「はぁ、めんどくさい...」と気力をなくす。いや、むしろ、買ってきた食材を冷蔵庫にしまう段階で、少しずつバッドムードに入っているような気さえする。
一人暮らしをしていた頃はむしろ料理好きな方だと思っていたけれど、夫と生活をともにするようになってから、「ホンモノの料理とは」を否応なしに実感させられた。
料理は編集作業に近いところがあるとつくづく思う。食材や調味料というさまざまな要素を、適切な量・タイミングを見計らって調理し、味付けし、絶妙な心地よさを生み出しながら1つの皿へと変貌させていく。夫は、編集者であると同時に料理人であることを心からの生きがいにしているタイプなので、調理プロセス1つ1つがとても繊細で、研究に研究を重ねて日々美味しい皿を作り出そうと邁進していて、私は結婚してからの4年間、ほぼ毎日その恩恵を享受し続けている。
結婚するまでの1人暮らし生活で、「(適当に)切る」「(適当に)炒める」「(適当に)味付けする」の3ステップで十分に美味しいと思っていた私の舌は、彼の料理に出逢ってからすっかり肥えてしまった。いや、舌が肥えるのはとてもいいことなのだけど、とても幸せで厄介なことに、彼は私が美味しそうに食べるのを見るのもまた、生きがいに感じてくれているらしく、私はさらに甘えて料理の鍛錬を怠るという完全なる悪循環。ついに、私の料理技術は落ちるところまで落ちてしまったような気がする。
このままだとまずいと思い、年明けから少しずつ料理担当の日を増やしてみてはいるけれど、昨日と今日作った料理が、あまり美味しくなくて、心底落ち込んでしまった。
料理が編集に似ていると思った自分を殴りたい。それじゃあ、料理が苦手な自分は編集の仕事が向いていないということになるんじゃないか。「大丈夫、美味しいよ」と励まし続けてくれる夫を横目に、自分のキャリアにまで勝手に紐づけてバッドに入り、死んだ目でご飯を食べていたのは、我ながらとてもシュールな画だったと思う。
料理が苦手だというのも、自分が勝手に作っているものなのかもしれない。少しだけ素直になって、丁寧に、まっすぐに、料理に向き合ってみようと思う、そんな初投稿。