この本 「国境なき医師団」の僕が世界一過酷な場所で見つけた命の次に大事なこと は、大手外資系IT企業の営業職を辞めて、「国境なき医師団」で働く村田慎二郎さんが、現地での体験や、英語が苦手なのに、「国境なき医師団」に入るためにやった努力などを通して感じたことが書かれている。そして、どのように自分の命を使って生きていくかが問われている。
全体を通して、自分とは次元が違う世界で圧倒されたが、私のこれからの残りの長くない人生にも取り入れていきたい考え方が多くあった。特に気になったところをメモしておく。
アイデンティティー
このアイデンティティーの話はとても印象に残った。
「アイデンティティー」と「セルフ(自己)」の違いは何か?
「我々はみんな水を運んでいる」
著者がハーバード・ケネディースクールで受けた授業の中で、ハイフェッツ教授がアイデンティティーについて表現した言葉の一つ。
アイデンティティーとセルフの違いがわかっていなかった私は、ハッとさせられた。
英会話の授業で先生から「〇〇について、日本ではどうですか?」といった質問をされることがよくあったが、私はこういった質問に対して、母語でも答えが見つからないことがほとんどだった。私は自国のことをあまり知らない。おそらく自分がどんな水を運んでいるのか理解できていない。
他者と意見が異なる場合、この人のこの主張はどこからくるものなのか?どこから運ばれてきた水なのか?自分の意見をただ押し付けるのではなく、相手のアイデンティティーに思いをめぐらせることで、はじめて課題解決に向けて歩み寄ることができる。
自分のアイデンティティーについて、考える時間を作ろう。
Different is special(他人と違うってことはスペシャルなこと)
これは、著者が恩師から、人生のレールから外れて孤独な気持ちになった時にもらった言葉だ。
人は、他人と違ていることに不安を覚えることがある。しかし、それが本当に自分がやりたいことであれば、その道を進むべき。人と違う人生は、それだけでスペシャルなのだ。
他人のことばかり気にして先に進めないようでは、人生がもったいない。
パブリック
自分のために行動する人と、チームや組織のために行動する人とでは、人間としての強さや優しさ、大きさが変わってくる。「自分以外のパブリックへの使命感をもつ」ことは、命の使い方を考える上でとても重要。
確かに、気持ちが常に自分に向いてしまっている人というのは、弱く、弱いが故に他人を攻撃しやすい気がする。でも、この使命感は諸刃の剣かもしれない気もする。そもそも、自分が成し遂げたい夢が、自分たちのさらに向こう側にいる多くの人にとっても幸せで平和であるかを考えたい。いや、パブリックとはそういうことなのか。