「水沼・桜庭・春木」004

mizunuman
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音楽のライブに行こうかなと考える時間が好きだ。下手をすればライブそのものよりも。

小さい頃から発汗をコントロール出来なくてずっとうっすら悩んでいる。真冬の柔道の授業でひとりだけ汗だくになっていた。冬場の野球の練習でウォーミングアップ代わりのランニングをしたら「湯気が出ている」と言われた。マスクをして呼吸をしているだけで汗をかくこともある。

三寒四温 おまけに自分のかく汗でジェットコースターより強い

前髪が伸びてはじめてかく汗でおでこの面積を求めよう

合同歌集『ベランダでオセロ』

顔まわりを中心にした発汗は三十を前に足先へとスライドした。顔まわりにしても足先にしても発汗後の冷えた感覚はステージ上の熱狂を前にしてもわたしという意識の膜を決して解放してくれない。こうして籐椅子に座って文章を書いているいまも意識は次第に足先の冷えに向かっている。

大切に額の汗を拭き取ればつま先の冷えに注意は向かう

靴ひもをまるごと外し両足の締めつけのない散歩がしたい

それでも今年は音楽のライブへ行く年にすることにした。

夏に名古屋。それから今月末に味園ユニバースであるライブに行くことに今日決めた。お目当てはTOMOO。

味園ユニバースは思い出の地でもある。短歌を始める直前に府内限定の追っかけをしていて結果的に短歌を始めるきっかけになったハルカトミユキがフェスの一番手で出演しているのを過去に見に行った。当時のわたしは、新聞配達のアルバイトを朝刊だけだがしていて、アルバイト終わりに少しだけ仮眠を取って向かった。

あれから約十年。その後に始めたアルバイトの延長で正社員になったけれど、変則勤務で深夜勤務もまわってくる。ラジオで耳にしたTOMOOの地声はハルカトミユキのハルカさんの地声とどこか重なる点があって安らぎを覚えた。

ライブの次の出勤日から再び深夜勤務のワンクールが始まる。深夜勤務のクールが終わると音楽のモードは転換しているのが常だ。ゴールデンウィーク明けのわたしのモードや如何に。

寝不足で一番注意してること 皿を割らない 目が覚めるから

時間切れって負けた感じがしないよねかじかんだ手に嵌める手袋

徹底的に性の文脈避けながら、穴、穴、穴、と連呼するひと

花の写真を撮らなくなった三年に転職と休職と復職

「かりん」月詠 2024年4月号(2024年2月提出分)