薪ストーブは冬の香り

mizutama120
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昨年11月。

一昨年に知り合ったTさんの新居にお招き頂いた。

Tさんのお宅は新潟と長野の県境にある山間地域で、冬は雪が2m以上も積もる豪雪地帯。雪が降る前に、と慌てて新幹線の切符を取った。Tさんとはオンラインでは何度も話しているけど、リアル対面は久しぶり、まだ3回目なので緊張しながら現地へ向かった。

吟味を重ねて、こだわって建てたというお宅は、本当に素敵だった。どこもかしこも新築の木の香りがする素敵な家で、雑誌に出たこともあるそう。

中二階の梁から下がるブランコやハンモック、おしゃれなバーみたいなカウンターキッチン、どこも絵になり素敵だけど、何より素晴らしかったのは、リビング中央にある薪ストーブだった。

ストーブ本体の中央にある炉口を開けて、細木を組み違えて置く。その周りに井桁の形に木を組み立て、火口になるチャッカ材を載せて火をつけた。最初は、か細い煙が上がり、徐々に赤い舌のような火が薪を舐めるように覆いつくして、薪ストーブは完成する。上に水を張ったやかんを乗せて、小さな炉口を閉める。

私、飯盒炊飯が好きでね。火を起こすの得意だったの。薪ストーブは合法的に焚き火ができるでしょ、だから、新しい家には絶対薪ストーブって決めてたの。

火って、毎回違うのよね。薪の組み合わせや火の付き方も毎回違うし、立ち昇る煙の色も香りも違うの。毎回、ワクワクするし見飽きない。日常なのに特別な、不思議な時間。

1日の終わり、家に帰ってきてストーブに火を入れると、あぁ自分の家だってホッとする。

なかなか火がつかないこともあるし、煙ばっかりモクモクしちゃうこともあるけどね。ウチはTV置いてないの。ご飯を食べたあとや寝る前の団欒のひととき、ストーブの周りに集まって話をする時間を大事にしてるんだ。

しゅーーパチパチという音のともに、ストーブからは、焦げたような煙いような匂いと共に熱が伝わってきた。

じんわり柔らかいけど、みっしり温かい空気が家を取り巻いていく。

外は今シーズン1番の寒さで、朝方には零下まで冷え込むとラジオが言っている。

Tさんとストーブを見ていたら、ノーズショップで嗅いだ「winter air」という名の香水を思い出した。

煙の香りと木の匂い。

今、同じ香りを感じて味わっている。