一首評:「西松屋、Medela、Combi、Aprica 子をもちてのち知る会社名」(永田紅)

大渕まこ
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公開:2025/10/27

「西松屋、Medela、Combi、Aprica 子をもちてのち知る会社名」(永田紅)

一見、子育てに関わる企業の名前を57577に合わせて並べただけのキャッチコピー的な、散文的な短歌にも思えるが、そうではないのである。

西松屋はベビー用品が一通りお安く揃うチェーン店であり、この歌が一般家庭を描いていることが伺える。

永田紅氏は、自身が研究者・歌人であり、両親も超有名歌人であるという、一般的とはいえない人物であるからこそ、あえて「西松屋」を最初に詠んだのかもしれない。

Medela(多くの産院で取り入れられている搾乳器を始めとした、母乳育児に役立つグッズを扱っている企業)からは完全ミルクではなく母乳育児をしているのかな、CombiとApricaからは、ベビーカーやチャイルドシートを、どちらの会社の製品にしようかあれこれ検討したのかなと想像が膨らむ。

企業名の羅列から詩情を引き出すことに成功したところがこの歌の素晴らしいところである。

※掲出歌は永田紅『いま二センチ』(砂子屋書房、2023.3)より。

@mkofchi
短歌結社・歌林の会、熊谷短歌会に所属しています。