こんにちは!
エンジンメイカー新宿御苑の114号室に住んでいるえむけーと申します!
今年もアドベントカレンダーの季節がやってまいりました。年に一度長文を書く機会があるというのは意外と悪くないもので、なんだかんだ毎年続けられております。今年も残すところ僅かとなりました。みなさま歳末の忙しい最中とは思いますが、少しだけお付き合いいただけると幸いです。それでははりきっていきましょう!
この記事はEngineMaker界隈 Advent Calendar 2024の1日目の記事です。
先日シェアハウスのチャットに「議論チャンネル」というのを作りました。これを作った経緯は色々あるのですが、ざっくりまとめるとテキストコミュニケーションにおいて相手と反対する意見を表明しずらい空気があるんじゃないかと思ったのがきっかけです。シェアハウスに限らずですが、われわれ日本人は水面下で根回しして世論のようなものを作り上げたり、多数派と同調することで相手より有利に立つみたいなことはすごく得意な反面、自分の意見を直接表明するのは苦手な人が多い気がしていて、特別な舞台を用意したら少しはやりやすくなるんじゃないかと思ったのです。
舞台だけ作ってもわけがわからずポカンとされて終わる予感がしたので、サンプルとして議題を出してみました。この話題が私の中で思いのほか面白かったので、この場を借りてもう少し掘り下げてみたいと思います。
他人の行動を変えようとすることの是非
マンガや小説を読んでると「他人を変えることなどできぬ…」みたいなセリフを目にすることがよくあります。自分と他人は違う人間なのだから、他人を変えることはできないのだ。みたいな感じでよく使われます。心理学の本でも「他人を変えるより自分を変える方が近道」なんてことがよく言われます。私自身、他の人から行動を細かく制限されると辛さを覚えるので、他の人も自由に動いて欲しい気持ちが強いです。
……が、私も年を重ねてきて、まわりの人を見てみると、若い人に道を説いたり改善を求めたりしていることが多いことに気が付きました。そして話を聞いてみると、どうもそれは善意で行われているようです。
私の考えでは、いろんな背景や考え方を持った人に囲まれていること自体が価値であって、細かいことをあれこれ指図して多様性を損なうのはよくないことだと思っていました。今年の抱負に「若い人の邪魔をしない」というのを掲げていたくらいです。何となく良いことを言ってるように見えますが、見方を変えるとこれは他人に興味がなかったり、人情に薄いだけという可能性もあります。誰かに指摘されたわけではないですが、ちょっと自分の考え方が偏ってる気もしてきたので、もう少し深堀りしたいと思って議題に挙げてみました。
他人を変えようとしない方がいい理由
結論から言うと、議論チャンネルで何人かの話を聞いた結果、ちょっとだけ考えが変わりました。詳しい話は後述しますが、以前まで私が持っていた考えを先に書いておきます。「他人に興味がないのでは?」とか「薄情な奴だ」という私の内なる声への反論でもあります。興味も情もあるんだよ!
そもそも変えられる気がしない
自分以外の人たちにもそれぞれ歩んできた人生があって、そこで培ってきた価値観があるわけですよ。それぞれの人生で色んな経験を重ねてきて、その積み上がったものが言葉や行動として表に出てくるものだと思うので、私の思いつき程度でひっくり返るような軽いものではないという気持ちがあります。
将来を心配する気持ち
時代の変化がもう少しゆっくりだったら心配するかもしれませんが、最近の世界はものすごいスピードで変化しているので、今の基準で心配しても数年後には的外れになっている気がするのですよね。自分の若い頃を振り返ってみても、当時の先輩たちが良かれと思って色々と助言をくれましたが、残念なことに今では殆ど思い出すことができません。
年の近い人はこれまでの人生が重くて変えられないし、若い人は未来が変化するので変える必要がないという感じです。いずれにしても他人の人生はその人が一番詳しいので、当事者の知見に勝るものはないという気持ちがあるのです。
思い込みもあった
他の人の話を聞いてみて気がついたのですが、私は他人の行動を変えるということに対し、「支配」とか「操作」のような邪悪なイメージを抱いていて、それで過剰に拒否反応を示していたようでした。これはさすがに偏った印象なので認識を改めました。議論チャンネルを作った一番の収穫だったと思います。
他人の行動を変えることが必要な場面
否定的なことばかり書いてきましたが、他人の行動を変えることが必要な場面というのも存在するようです。これもチャンネルで得た知見ですね。
仕事としてやるケース
会社の上司と部下であったり、コンサルタントと顧客のように、相手の意識を変化させることが仕事として求められる場面もあります。私は専門じゃないのであまり詳しくは知らないですが、実際に社会で多くの企業が運用しているはずなので、ノウハウも貯まっていると思います。
ただ、これは相手との関係が契約によって固定されていることが前提なので、クラスメイトや友人のように関係性がフラットな相手にはそのまま適用できないと思います。
迷惑な人から逃げられないケース
他の人に迷惑をかける困った人がいた場合、その人からは距離を置くしかないと思ってましたが、集団を管理する立場で見ると、距離を取るのに充分な広さがないこともあるので、場合によっては調整しないといけないようです。
例えば職場でいつもグーグー寝てる人がいて、それを気にしない人もいるけど、社員の中には不公平さを感じて会社を辞めてしまう人が出てくるかも知れない。そうなると結果的に会社全体の不利益になるので、行動を変えてもらわないといけない。みたいなことだと思います。
メンバー同士で調整できればいいですが、多くの場合は管理者の仕事になります。集団全体の利益と個人の利益をバランス調整するわけで、これは慎重さが求められる大変な仕事です。これを一部のメンバーが行うのは難易度が高そうに思えます。えてして個人の利益は集団の利益と相反することが多く、また集団ごとに背景や事情が異なるため、集団Aの事例がそのまま集団Bに適用できるわけでもありません。所属するメンバーが集団の利益を考えて判断できるケースは稀だと思います。
というわけで、迷惑な人から逃げられない場合の調整として相手の行動を変えるのは、必要性の判断も含めて管理者に任せるのが一番です。そうなるとこれも勾配のある関係性の間で行われるものになり、フラットな関係の相手にはそぐわない感じです。
余談ですが、集団の大きさを社会全体にまで広げると「公共の利益」という便利な基準があります。「公共の福祉」と呼ばれることもあります。これが損なわれることを防ぐために、個人の人権に制限をかけてよいというのが法律で定められており、何をどこまで制限できるかも過去の判例に積み上がっています。個人の表現の自由は保障されるけど、全裸で外を走り回るのは公共の利益に反するからダメだよ。みたいな話ですね。社会に属する全ての構成員に適用されるので便利な基準です。
他人の行動を変えることが望ましい場面
ここまで見てきましたが、フラットな関係性にある他人の行動を変えることが必要な場面というのはやっぱり少ないんじゃないかという感じになってきました。会社とかプロジェクトチームのような、報酬と引き替えに変化を受け入れるみたいなのしか思いつかないぞ。
……と思ったのですが、議論チャンネルで大きな発見があったので記しておきます。以下の条件を全て満たす場合は、他人の行動を変えることが望ましいと言えそうです。
相手と信頼関係がある
行動を変えることが本人の利益や成長に繋がる
相手も自身の成長を望んでいる
同期のライバルとか、団体競技のチームメイトなんかはこんな感じなのかもしれません。私の感覚ではかなりのレアケースですが、このような互いに切磋琢磨する関係性が当たり前なグループもあるわけで、そこに所属する人たちにとっては他人の行動を変えることは日常的に行われているのかもしれません。個人的にはけっこうなカルチャーショックでしたが、その一方でちょっと憧れちゃうような感覚もありました。
よい影響を与える
なんやかんやあって、他人の行動を変えようとすることへの否定的な気持ちは少し和らぎましたが、やっぱり私が実践するにはハードルが高そうだなあという気持ちは変わらず残りました。信頼関係を築くのは大変だし時間もかかりそうです。
自分でやるのはハードルが高いですが、以前から感じていた忌避感はだいぶ薄れてきて、だんだん興味の方が勝ってきました。そこでさらに調べてみると「よい影響を与える」という方法を見つけて、これがとてもしっくりきてよかったです。
自分がよいと思う行動をして、それが周囲の誰かにとってよい影響になったら嬉しいですよね。「他人の行動を変える」に比べると消極的ですが、対象は自分なので完全にコントロールでき、相手の行動が変わるのは副次的な効果になります。すぐに変わらなかったとしても、将来的な変化の材料になるかもしれないし、対象が複数になるので単純に成功率が上がります。同時並行で行えるので効率もよいですね。
変化する側の立場で考えても、たくさんの人と出会って、色んな人から少しずつ影響を受けて、自分で真似したり反面教師にしたりしながら自然とゆっくり変わっていくのが理想的だと思います。タイムパフォーマンスが重視される昨今ですが、急激な変化は大きな反動を伴うので危険なのです。
結論
他人の行動を変えるのは必ずしも悪いことではないけど、それよりも「自分がよいと思う言動を続けることで、そのうち周囲の誰かにとってよい影響になることを期待する。」というのが私には向いてるようです。というわけで、まずは周りの人に悪い影響を与えないように、そしてあわよくばよい影響を与えられるように、自分の仕事や生活をがんばっていこうと思いました!