ピアスをあけた。開け直すのは4回目。悉く失敗してきた。
あけたのは両耳のロブとヘリックス1つ。
昔からピアスが好きだった。
シルバーで統一されたパンクっぽいファッションが特に好き。特に好きになった明確な理由はない。身近な人も2~3個空いてるくらいだし、パンクやロックがとても好きって訳でもない。自傷の癖もない。好きなアクセサリーを沢山つけて、自分でそれをかっこいいなと思っているものは素敵だ。綺麗に維持するのってかなり神経使うし、それを含めて凄い。
高校生の時からずっと憧れはあった。
でも夏休みの間にこっそりあけるとか、そういうことをできるこどもではなかった。大人しくて、授業には出席してる癖にずっと勉強ができなかった。
不思議なことに仲の良かった友人たちは皆賢く、男女ともに人気のある明るい人たちが多かった。当時もなんでこんな良い人たちが友達になってくれたんだ?と思っていたけど、今思い返しても間違いなく自分が1番暗いやつだった。
最後の方は諦観もあったので、休み時間は本を読んでいるか、机に突っ伏して寝たふりをしていた。サボる勇気もない。薄暗い腕の中でプリントされた偽物の木目を眺めながら同級生の声を聞いていた。嫌なやつだったとも思う。
その時と、今も変わらず、他人から自分を評される時に真面目で気が弱いという言葉を貰うことが多い。そういう時に、自分はそんなことない。ただ根暗が流されているだけで、自己保身のために人に優しくしている怠惰な人間です、と罪悪感に似た感情が生まれる時がある。そういう時にピアスへの憧れを思い出す。
結局のところ、自分にとってのピアスはささやかな抵抗のつもりなのかもしれない。もしくは御守りに近いもの。ピアスがあってもなくても結局は自分なのだけど、少しだけでも強気でいられるように。
今回久しぶりにピアスをあけようと思ったのも仕事で舐められたくなくて、不甲斐ない自分が悔しくて、の節が強かった。最終的にこんな形にしたい、というのもあるけど、それにどこまで近づけられるかは分からない。気力とかタイミングの問題。
生活のなかで以前ピアスをあけた時と明らかに違うことがある。
ねこたちと一緒に暮らすようになったこと。しかも寝る時には容赦なく人の顔を枕にしたり喧嘩場所にしてきたりするので、開けて数日は壁と枕と祈りでやり過ごしていた。今のところはなんとかなっているけど、耳を足蹴にされているときがあって飛び起きることもある。
たった3つぽっちのシルバーをみて思う。もう学校で寝たふりをしていたあの頃ではない。猫と過ごしながら仕事をしているおとなになった筈なのに。憧れは変わっていないんだな。