確認した。やっぱりそんな感じでした。どちらかというとBLかもしれない。
長めのあらすじ
主人公である増山は、高校時代から真女方の万菊さんに憧れていた。大卒で裏方に携わるようになったのは、万菊さんの芸に傾倒していたことのみならず、舞台裏に通暁することで本物の幻滅を感じ、この万菊さんの魅惑の縛めから逃れようと考えたためだが、幻滅するときはなかなか訪れなかった。
増山の属する劇団の正月興行の演目に或る新劇作家の新作が取り上げられることになり、それに新劇出身の演出家川崎が参加した。川崎は歌舞伎をまったく知らず、用語を教えるなどその手助けをした増山は、川崎に頼りにされるようになった。
いつからか万菊さんは川崎に恋をしていた。慣れない異世界で、言うことを聞かず威嚇的な役者に接して苦労する川崎の様子を見て、自分だけは言うことを聞こうと、川崎のいっさいの指示に従った。「他の方々に、私から申上げるわけに行かないし、ふだんやかましい私が大人しくしていれば、他の方々も気がつくだろうと思います」。
川崎はそのような万菊さんを見て、「なかんずく万菊さんがたまらない」「『そうか。お前がそうしたいんならそうしてやろう。しかし舞台には一切私は責任はもてないぞ』とあの人は無言のうちに、しょっちゅう僕に宣言してるようなもんだ、あれ以上のサボタージュは考えられんよ。僕はあの人が一等腹黒いと思うんだ」と言う。
ふたりの胸中を打ち明けられ、あいだに挟まれる増山は、相手の心に鈍感なところだけは似通っていると思った。
万菊さんは、舞台が閉幕したあと、川崎とふたりきりで食事ができないかと増山に相談した。その件を伝えると川崎はいやそうだったが、増山は「いい機会だから、歯に衣着せないで、君の言いたいことをみんなぶちまければいいじゃないか」と勧め、川崎は行くことに決めた。
淡雪が降るなか、ひとつの傘の下にいるふたりを見送る増山は、ここでようやく幻滅を感じた。しかしそれと同時に嫉妬に襲われている自分を知った。
収録:三島由紀夫『花ざかりの森・憂国』(新潮文庫)、新潮社、平成22年、p.203-236.
[[20210417]] 11:06:22|Trickle より移行