映画「エクソシストシャーク」を観ました。人食い悪魔鮫とエクソシストの戦いを描いた……とされる作品。なんと「サメ映画総選挙2021第1位」「サメ映画オブザイヤー2022 第3位」と輝かしい受賞歴をお持ちのようで、多くの人に愛されていることが窺えます！
私は今まで「サメ映画」と呼ばれるモノを観たことがありませんでした。ホラー映画が苦手な私は凝り固まった偏見を持っていて「サメが登場したら、人間は食べられちゃうじゃん！怖いに決まっているよぉ！」と長年思っていました。サメに人間が襲われるシーンは絶対に怖いと決めつけていました。水フィールドというサメ有利な環境下において、抵抗手段を持たない人間は恐れおののくしかないのだと。そういうスリリングな恐怖を味わいたい人が「サメ映画」のファンなのだと思っていました。
結論、それは誤解でした。
サメは海じゃなくてもやって来ましたし、全然怖くないサメに噛まれるシーンもありましたし、スリリングじゃなくてエンターテインメントを充分に堪能させてくれました。71分の映像を見終わった後、私の心の中は「サメ映画ってすごいなぁ！」という清々しさで満ち溢れていました。今まで誤解しててごめん、本当にごめん。今まで先入観によって妨げられていた「サメ映画」という新しい世界の扉が、いとも簡単に開かれました。これがBrand New Worldというものですか？
初回鑑賞後に「すごいものを観たなぁ！」という気持ちが膨れ上がり、内なる興奮を我慢することができなくて、すぐに2回目を観ました。
「エクソシストシャーク」は色んなことを私に考えさせてくれました。
・登場人物が多くて混乱しちゃったけど、私の中での人物設定は合っているんだろうか？
・サメと嘔吐の関連性ってなんだろう？
・神父の回想シーンは何を強調するために入れられたんだろう？
・盗撮のシーンはどういう意味を持つものなんだろう？
・自分が分からないと思う部分は、どこが説明されていると解決されるんだろう？
などなど。疑問が矢継ぎ早に脳内に浮かび上がり続けます。でも、作品は答えてくれません。一方通行の疑問だけが溜まってゆきます。「なぜ？」「どうして？」「何の意味が？」のラッシュで脳が処理しきれません。そして次第に考え始めます。【自分だったらどういう作品にしただろうか？】と。
ロケ地や役者、設備や技術。様々な制限がある中で、どうやってこの作品を描き出すことができるんだろう？自分が納得するためには、どういう工夫を凝らすんだろうか？ ……考え出したらもう止まりませんでした。
「人間とCGサメが一緒の画面に映ることができないとしても、"サメに襲われた"ことを明示して恐怖を提供する方法は？」「"悪魔"の要素を強調するために、どんなシーンを入れるとより効果的だろう？」「GZBクラブにもっと意味を持たせるとしたらどういう設定を入れ込むだろう？」「キャラクターの服装や思想・喋り方で、もっと人柄や立ち位置を明確にできないだろうか？」「vs チャネリング姉さんをもっと怖くするにはどこを掘り下げればいいだろう？」「冗長に感じる部分をカットしたとしたら、その代わりにどんなシーンを入れたい？ それは何のために？」
止まらない。思考が止まらない。止まらない。トマラナイ。
そして思考が飛躍する。二次創作をする自分の心にこう自問する。【自分が書く作品は、描きたい事柄を不足なく伝えきれているんだろうか？】と。
「自己満足で描きたいシーンだとしても、独りよがりになりすぎてないだろうか？」「ヒントが少なすぎて混乱してしまう構成になっていないだろうか？」「乱暴な場面転換によって読者を置いてけぼりにしていないだろうか？」「昔に書いたあのお話、もうちょっと場面を工夫して書き直したいなぁ～」「あの作品は、テーマを混ぜ過ぎてしまったかもなぁ～」
脳内に巡るのは、過去の自分の作品に対する客観的な視点と、ちょっぴりの後悔と、前向きな改善点。「次に何かのお話を書くときは、この部分を意識してみようかな！」というポジティブなチャレンジ精神が胸の中を支配します。今回のサメ映画で学んだことを活かしてみよう。この学びはきっと、自分がより納得する出力にするために力を貸してくれる――そんな根拠のない自信で胸がいっぱいです。
サメ映画は私に気づきを与えてくれました。そしてそれは、自分の創作趣味を刺激する、大事な大事な気づきでした。私はもっとサメ映画が見たい。もっとサメ映画を知りたい。そう渇望してしまう私は、もう既に悪魔のサメに憑りつかれた人間のひとりなのかもしれません。作中に出てきた人物のように、私はもうサメになるのかもしれません。みなさんを食べてしまうかもしれません。その時はどうか、ちょっと大きめの十字架で私を撃退していただけますと幸いです。