書棚にある本を手に取る。
そして最初のページから開く。
そこには文字がある。
その文字は僕が本を開く前からそこに存在していた。
そして僕が開くと自然と文字は語り出す。
ずっと読んでもらうのを待っていたかのように。
その本が僕の書棚におき留められていた古めの本である場合は、ずっと文字たちは冷凍保存されていたようなものである。
開くと一瞬で解凍され、何もなかったかのように語り出す。
そのような文字たちは、ちょっと不憫にも感じる。
実は書棚に収まって、並べられている本の中の文字たちも、狭苦しく思いながらもずっと語り続けているのかもしれない。
気絶しそうなほど無数の文字は文字列となってそこに存在し、本が手に取られ、開かれるのをじっと待ち続けているのだ。