さんぽのすゝめ

世の中には2種類の餅が存在します。

さんぽをする餅と、さんぽをしない餅です。

ちなみにさんぽする餅も日によってさんぽしなかったりするので、結局のところみんな一緒です。

たまにはさんぽしない日があってもいいじゃない。餅だもの。

たとえば雨の日。あるいは寒い風の吹く日。

そういう外出すら億劫になる日には、家の玄関に近づくことすらせず、ぬくぬく温かいお布団に包まりながら今日一日をやり過ごそう。

そんな諦めにも似た弱気に支配されそうになること、一度や二度ではないでしょう。

しかし、負けてはいけません。

震える身体に鞭を打ちすえ、外の世界へと一歩踏み出す。

その小さく偉大な一歩、いやさんぽこそが、この人生を大きく飛躍させるための礎となるのです。

みんなもやろう。有酸素運動。

 

はい。

という訳で、さんぽのお話です。

現代人の運動不足が嘆かれるようになり、早何十年。

いつぞやの記事でピクピクなニンジン、いやピクミンのスマホアプリの話をしていた事からも分かるように、私は最近ちょくちょくさんぽしています。

いつからと言うと……だいたい1年とちょっとくらい前からかなー。

そんなに最近でもないかもですが、まあ途中でさんぽをやめちゃってた期間もあったし、Pikumin Bloom を始めたのはこの前の年末くらいからなので、まあ最近といって良いでしょう。

え、もう3月も終わるから最近じゃない? 2024年の1/4が既に過ぎ去ってる?

…………。

まあ、まだ3/4もあるしね。ニューイヤーをエンジョイしていきましょう。

で、さんぽの話に戻りますが。

元々、結構飽きっぽい性格を自負している私が、途切れ途切れとはいえ丸1年以上さんぽを継続出来ているというのは、中々どうしてすごいことなのではと思います。

昔から何かにハマるときはもの凄い勢いでハマって、それから暫くするとシュンっと冷めることの多い私。

コツコツ地道な作業をするのも割と好きなのですが、それを習慣として継続できるかは別の話。

夏休みの宿題は最初の1週間は真面目にやって、残りは最終日間際に慌ててやる派。

そんな感じのお餅です。

そんな私がさんぽをずっと続けてきて、なんでここまで続けられたのかなーと考えてみると……。

一番の理由はずばり、「さんぽそのものを楽しめたから」かなと思います。

え、そんなこと?

と、思うかもしれませんが、これはとても大事なことです。

考えてみてください。

今までさんぽをほとんどした事が無かった人が、「よし! 今日から毎日さんぽするぞ! 習慣にするぞ!」と決心したとして。

その理由は、一体何でしょうか。

さんぽが好きになったから? 歩きたくなる遺伝子がDNAに組み込まれていたから?

ノンノン。

もしそんな理由なら、わざわざ決心するまでもなく、とうの昔にさんぽを始めていたはずです。

では、何が理由なのか。

それはずばり、「健康のため」です。

…………今、「それの何が悪いの? 別に普通じゃん」と思ったでしょう。

いや、実際悪くはないし普通なのですが、それはあくまで、さんぽを始めるきっかけとしての話。

さんぽを習慣として継続していく上では、それだけの理由ではちょっぴり力不足です。

それはどうしてかというと、さんぽをすることが「健康になりたい」という目的のための手段でしかないからです。

むしろ逆です。

さんぽを継続したいなら、さんぽそのものを目的とすべきであり、健康になるというのはあくまでもオマケ程度に考えるべきなのです。

すなわち、さんぽをする正しい理由とは「さんぽたのしいさんぽたのしいさんぽたのしいうへへへへへさんぽさんぽさんぽさんぽわっしょいわっしょーいさんぽちょー気持ちいいサイコー今ならさんぽ通りこして1万歩どころか100万歩すら楽勝じゃーーーい!!! ふひょひょひょひょひょひょひょ!!!」です。

罷り間違っても健康のため、などと自分に言い聞かせてはいけません。

さんぽをするのはさんぽのため。

健康になろうがなるまいが、体重が落ちようが落ちまいが、ただひたすらにさんぽを楽しむ。

それこそがさんぽを継続する秘訣なのです。

たとえばあなたがさんぽをするとき。

頬を撫ぜる風の香り。足裏を押し返す大地の感触。足元に生える季節の草花。遠くから聞こえる電車の音。喉を通る空気の冷たさ。自分の呼吸のリズム。

そういったものを意識して、感じることはあるでしょうか。

あるいは通勤通学の最中、いつもはただ足早に視界から流れ去っていた景色の中で、今日だけはそこに立ち止まって、道端にぽつんと置いてある、まだ一度も入ったことのない店の看板に、ちらりと目を向けてみたことはあるでしょうか。

何気ない日常。移ろう季節の今まさにこの瞬間に、私がここに存在するという実感。

それに気付かせてくれるのが、さんぽという営みなのです。

…………いやまあ、さすがに毎日毎日そんな詩的なことを考えつつさんぽしている訳でもないのですが。

どちらかというと、歩数でポイントが貰えるアプリとか、さっき言った Pikumin Bloom みたいな、さんぽで稼いだ歩数がすぐに貰えるご褒美になるもの。

そういったものでモチベーションを維持してきたというのも割と大きかったりします。

いずれにせよ、どちらにも共通しているのは、今この瞬間の自分にとって嬉しいことをたくさん用意する、ということ。

繰り返しになりますが、「健康になる」という目標。そのためにさんぽをするということ。それ自体はとても良いことです。

しかしここで立ちはだかる大きな壁として、たとえ今日さんぽをしたとて、それによって今すぐに健康になれる訳ではないという現実があります。

さんぽを続けた結果、健康になったという実感が得られるのは果たして1ヶ月後か、はたまた半年後か、1年後か……。

そんないつ訪れるかも知れない遠い遠い将来の自分、という名の赤の他人のために、好きでもない、寒いしめんどいし疲れるさんぽを毎日続けられるでしょうか? 

いや、無理。

必死に働いた給料を税金と社会保険料に持っていかれたり、必死に戦った経験値をがくしゅうそうちで他のポケモンに奪われたり。

そんなことばかりをずっと意識して、それでもなお習慣として継続出来るような鋼の意志の持ち主はそうそう居るものではありません。

だからこそ、さんぽそのものを楽しむのです。

未来の自分が健康になろうがなるまいがどうでもいい。

いや、どうでもよくはないんだけど、そんなことよりも今この瞬間のさんぽが楽しい。心地よい。リラックスできる。

そんな幸せをたくさん今の自分に与えてあげること。昨日でも明日でもない、今日という一日に喜びを増やすこと。

そうすることで、無理なく、むしろイキイキと楽しみながらさんぽを続けられるはずです。

別に毎日さんぽしなくたっていいんです。

週末だけ、あるいは気が向いた日だけでも、「やらなきゃ」じゃなくて「やりたいな」という気持ちでさんぽに出かける。

そんな日々をなんとなーく続ける。それだけで十分です。

なんなら習慣化すら別に出来なくてもいい。今日だけちょっとさんぽしてみて、明日からはまた、昨日までの生活に戻っても構わない。

それくらいの心構えの方が、案外気楽に続けられたりします。

実際、私も今までさんぽ出来なかった日は何度もありましたが、そのたびに「ま、いっか。そのうちまたさんぽしたくなるでしょ」というマインドで乗り越えてきました。

とまあ、ここまで色々なことを書いてきましたが、とどのつまり私が言いたい事はひとつだけ。

さんぽ、おすすめですよ。みんなもやろう。