時計のない朝

休みの日、朝早くに予定がないとき。

スマホのアラームを設定せずに寝て、好きなだけたっぷり寝坊してから起きる。

そういう朝の迎え方が、私はけっこう好きだったりします。

そんな幸せな気分を平日にも味わえないかなーと思い……

ふと思い立って、壁に掛かっていた時計を外し、クッションの裏に隠してみました。

今日の仕事が始まる時間まで、あと60分くらい。

私はそれまでの間、この平日の朝を時計を見ずに過ごしてみることにしました。

もちろん、遅刻だけはしないようにスマホのアラームをセットして……

そのスマホも、クッションの裏に隠してしまいました。

時計を見てしまえば、「あと何分で仕事が始まる」とソワソワして、落ち着かない気分になってしまいます。

しかしその時計が存在しなければ、私は時間を気にせずにゆとりある朝を無限に満喫できるはず。

そんな期待を胸に、私はテレビを付け、森とか海とかの自然っぽい映像をただボーっと眺めてみることにしました。

するとなんということでしょう。

私は数分おきに、時計がいつも掛かっていた場所をチラチラと見ていたのです。

いやめちゃくちゃ時間気にしてるじゃん。

身体に染み付いた習慣とは恐ろしいもので、なんとなく時間が気になった瞬間には目がそちらを向いていて。

普段なら意識すらしなかったその事実に気付いてしまった私は愕然としました。

しかしそんなことではへこたれないのがこの私。

時計を追ってしまう自分の目を何とか引き戻し、テレビに映るすごい自然っぽい映像を楽しみます。

わー。緑が綺麗だなー。あ、小鳥さんが飛んでるよ。かわいいね。ふふふ。

その後は何度も浮かぶ邪念を払うために、唐突に腕立て伏せを始めたりスクワットしたり。

もはや「のんびり」とは何なのかを問いたくなる朝ではあったけど、なんだかんだ、いつもよりリラックスできたような気がします。

時計のない朝。また今度やってみようかな。