映画『関心領域』

mo
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公開:2025/9/18

ちょっと前にAmazonプライムで見た映画。ブルスカに置いてた見た映画メモにあったのでこっちにも。

ジョナサン・グレイザー監督作品A24配給。アウシュビッツ収容所の所長一家が、収容所の隣に建てたマイホームで幸せそうな日常を送る話。

段々と日常が崩れていくのかなと思いきや割とそうでもなく。 所長自身は良心の呵責が一抹程度はあるものの、妻子たちは「ユダヤ人は塀の向こうから出てこないし」と和やかにいいながら優雅な生活をしていて、 人間ってこうも無関心になれるのだなとゾッとした。でもそれが現実なのだなとも。

結局彼らはアウシュビッツでなにがあったのか知らないんだろうし、知ろうともしない。おそらく、収容所から聞こえる悲惨な声は確実にあって。妻が自身の母親を呼び寄せて一緒に生活してみたものの、母親は生活に耐えきれなくなってしまったし、きっと意図的に見ないふりをしなければ成り立たない生活だったのだとも思う。

途中から所長自身に異動命令が下りたものの、建てたマイホームでの理想的な生活を手放せない妻と、妻に甘い夫の構図が普遍的だな、と。でも、そのマイホーム、アウシュビッツ収容所の隣なんだよなぁ、とか。川遊びしている時に、色々廃棄物流れてきていたりしたんだよなぁ、とか。そこかしこに違和感はいっぱいあるし、収容所では毎日悲惨な出来事が起きているけど、隣に暮らしている人間にとっては別にそんなもの何も関係なくて。やっとのことで建てた優雅で理想的なマイホーム暮らしなんだよなとも。あと、途中で差し込まれた、下働きの女性との不倫シーンがなんともいえない気持ちにさせられた。あのシーンも、収容所で起きていた普遍的な事象の一つなのだろうし。見終わってから、想像以上にタイトルが中身を表す映画だなと。

人間にとっての価値観や、視野のギャップがグロテスクだと感じて、色々と考えさせられる作品だった。

たぶん、自分がそういう視点で観ることができるのは、『映画』という枠組みの中で『2025年』の知識があって、歴史を知っているからこそでもあって。その時代、その地域においての価値観や視座では、収容所のことなんてその程度の認識だったのだろうとも思う。

あえての風刺として作られているから余計にその図式が強調されている意図はあれど。自分の常識が100年後にも常識とは限らないのと同様に。だからこそ、二重の意味で色々と考えさせられることの多い映画だったなぁと。

二度と見たくないほど胸糞というわけでもないけど、あんまり積極的にもう一度見たい映画ではないかも。でも、もう一度見たら何か分かるものが増えるのかもしれない。

@mochimochi_ya
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