はじめてみるタイプの西部劇だった。ライカートが手がけた他の作品と同じく、カメラはつねに「女性」や「生活」のそばにあり、西部劇と聞いて自分がイメージしていたようなものーー決闘、開拓、成長といったものーーはまったく描かれていない。
だからなのか、静かにひろがる砂漠は開拓の「過去」ではなく、崩壊後の「未来」のようにもみえてくる。西部劇というより、SFやサイバーパンクをみているような感じがそこにはある。
ゆく道を断ち切る(=カットオフ)できごとが何度も起こる。そのなかにあって、なにかを信じようと試みること。そのことが静かな、けれどあたたかいまなざしを通して描かれる。
ライカートの作品をみていると、自分じしんのどうしようもなさや、どこへ向かうのかわからない道のりを、ふしぎなくらい当たり前に、好きになれるような気がしてくる。