久しぶりに生まれ育ったはずの町に行って、ただ一人ゆっくりあてもなく散歩した。空気だけ涼しく春の陽気が心地いい日。
昔住んでいた気がする住居には違うご家庭がお住まいだし、昔通っていた馴染みの場所はすでになくなっているし、この辺りにいるはずの同級生にも全くといっていいほど会っていない。
だから正直この町はもう自分のふるさとだとはほとんど思えなくなっていて、歩いててもずっと違和感しかない。知らない町。
それでも何か大事なものを昔この町のどこかに置き忘れたまま今日までずっと生きている気がして、ふと時折り歩きに来てしまうんだけど、それが何なのか今回もやっぱり見つからなかった。
もうこのまま一生それは見つからないのだろうなと半分くらい諦めつつ、砂金や化石を探し当てるつもりで残りの半分くらいは期待してもいいかなと思ってる。