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事業別組織と機能別組織

monzou
·
公開:2026/7/20

最近「事業部制」と「機能別組織」の構造的特性に関心がある。一時期エンジニアの世界では「チームトポロジー」という概念が流行ったが、これを会社全体に適用しようとすると認知負荷が高すぎて全然現実世界での運用に耐えられないなと思うので、もっとシンプルな枠組みで責任を明確化できると良い。

例えば NewsPicks の場合、昔は「機能別組織」だった。これは規模が小さい間は機能していたが、事業が多角化し、大きくなってくると色々な問題が顕在化した。オーナーシップの不在・認知負荷の増大・コミュニケーションコストの高騰・コスト規律の緩みなど(要はマネジメントが超難しい)。機能別組織は、強烈なトップダウンと事業解像度の高さがないとなかなか機能しづらい面もあると思う。

そこで「事業部制」に移行したわけだけど、これはオーナーシップが醸成され、責任が明確で、PDCA が速く、リーダーの成長支援をしやすいメリットがある。他方で、重複機能が存在したり、部署横断的な取り組みがやりづらく部分最適になりがちである。僕が CEO になった時点での一番の課題は、横断的な取り組みが非常にやりづらい・進まないことであった。

というわけでいずれもメリデメあるし一概にどちらが良いとかは言えないのだけど、僕は基本的に一定大きくなった組織は事業部制の方が良いことが多いのではないかと思っている。それは オーナーシップの醸成がその他のデメリットを補って余りあるメリットがあるから だと思っている(実感している)のだけど、これは感覚的なものであって、精神論っぽくなりがちである。僕個人は、この選択は「合理と情理のどちらを信じるのか」という問いに近しいところがあると感じている。そしてビジネスの世界においては合理的判断が常に支持されがちであり、その現実をやや警戒している。

さて、勿論こういったテーマに関わる研究は一定なされているようだけど、現時点で分かっているのは:

  1. 単一事業であれば、機能別組織が最適である

  2. 複数事業で相互依存性が低ければ、事業別組織が最適である

  3. 複数事業で相互依存性が高い場合には、何が最適かは分からない

ということらしい。特に 3. が問題なのだが、要は「本当にそれらの事業は相互依存性が高いのか(逆説的に言えば、相互依存性の高い事業を作れているか)」次第で、最適な組織は変わるのだろう。これは一般によく言われる「シナジー」を創出するのがいかに難しいかということでもある。範囲の経済を回収するには、トップがそれぞれの事業を深く理解した上での戦略・組織統制が必要であり、単に事業 ROI を評価するのとは全くレベルの異なるマネジメントが要求される。そしてマネジメント能力が不足する場合、それは単に調整コストの過大な高騰を招き、組織崩壊・事業崩壊を招き得るだろう。

だからこそ「シナジー」が本当に実現し得るのか、それは相互依存性が高いのかを極めて慎重に見極めて投資する必要がある。単に「効率性」の議論に終始してはいけない。組織で働いていると非常にありがちなのは「組織の凝集性を高め、効率性を高めよう」といった責任不在の議論である。組織に関して「効率性」を求めても碌なことがない。責任を明確化する方がよほど実効性が高い というのが個人的な経験則である。

何しろ組織を変えるのは難しい。組織をガチャガチャ変えるというのは基本的にめちゃくちゃ悪手である。組織変更には大きな切替コストと痛みを伴うし、不可逆ではないが元に戻すのは簡単ではない。だから良くわからないときは兼務や共同チームを作ってみるなど、プロダクトのように小さく実験するのが良い。

話が長くなったが、複数事業を抱える組織においては「シナジー(相互依存性)の実在を見極めること」、そしてシナジーが実在する場合は「それらを回収できる経営能力を身につけること」が重要なのであろう。

@monzou
NewsPicks をつくっています。Twitter:@monzou