雨が降る季節になりました。ビニール傘の出番です。
生活必需品の多くは、洗練された良いプロダクトではあるものの、生活に馴染みすぎているからこそ、その良さをすぐに言語化するのは容易ではないように思えます。今回は、文章の練習として「ビニール傘の良さ」をつらつら書いてみることにします。
濡れない
雨が降ると濡れます。濡れると寒くなります。でも、傘を差すと、濡れずに済み、肌寒い思いをしなくてよくなります。
傘が発明されたのは、古代エジプトとされていますが、当時は雨ではなく日光を、暖ではなく権力を誇示する道具として使われていたようです。なので、雨避けとして傘が用いられ、一般大衆にまで広がったのは、それからずっと先のことで、つい百年から二百年前くらいなのかもしれません。それまでの雨の日は、身体が濡れる、着ているものが濡れる、寒い、ということが当たり前だったと考えると、傘は偉大だなと思います。
あと、ビニールというのが重要。屋内に入る時、ぱさぱさとするだけで大体の雨粒が降り落されてくれます。(あの時の傘の動きと、犬がぶるぶるする動きが似ているのは、収斂進化、もしくは、傘はバイオミメティクスの産物、ということなのかもしれない。)
移動できる
とはいえ、濡れないための術は、近代の人類がようやくにして獲得したものではありません。雨宿り、洞窟、住居。雨や日光といった、鉛直方向からの落下物を防ぐには、地面に対する正射影が半径約0.3m以上の大きさとなるような物体を頭上に備えられれば十分です。
ただ、傘はそれと移動を両立できるのがミソです。
「雨に濡れないこと」と「移動」を兼ね備えたテクノロジーは、現代社会において、自動車・船舶・列車などの乗り物、そして、傘しかないでしょう。しかもこの時、塞がるのは片手だけ。道路交通法にも海上交通三法にも縛られません。
抑圧があるなかで、そこに自由を求める。それが傘に込められたフィロソフィーです。今から10年前、2014年に香港で起きた「雨傘運動」と呼ばれる反政府デモも、もしかするとこの哲学が根底にあったのかもしれません。
(ここではかなりテキトーなことを言っています。傘を指す歩行者も道路交通法を守らなくてはなりませんし。)
前が見やすい
傘界の小田急ロマンスカー、と言っても差し支えありません。
上記二点は、傘という形状なら満たすことではありますが、今回書きたかったのはビニール傘ならではの良さ。ずばり、移動する上で、前がとにかく見やすい。雨の日も風の日も、どの角度にビニール傘を開こうとも、前方の視界は良好です。ただし、晴れの日は、仇となる模様。
降水量が可視化される
雨粒の大きさや量、降っているか・止んでいるか。一目でわかります。正直なくてもいい機能です。
まぁ、最近はデータをユーザーに可視化して伝えてくれるサービスは多いように感じますし。GItHubのコントリビューションを可視化してくれる「草」とか。つい最近、感動したのは、マイナポータルです。ログインすると、「わたしの情報」というページから、払ってきた医療費の年毎の推移を棒グラフでみることができます。正直、どういう顔で眺めればいいのか、健康体の若者にとってはまだわかりませんが、人によっては価値のある情報なのかもしれません。
ぶっちゃけなくてもいいですが。
シェアリングエコノミー
私は、傘立てを使う際、自分の傘だと分かるように、ちゃんと目印になる物を貼ったり付けたりしてますよ。
とはいえ、そんなことが起こってしまう世の中なのは、特徴がないビニール傘の特徴ゆえ。それに、もし、花柄の傘と無色透明のビニール傘があったとして、手に取りやすいのは明らかに後者です。柄の部分が錆びていようとも、使った人の匂いが残らない、そんな無機質さがビニール傘にある気がします。
ということで、ビニール傘の良さを、五点ほど挙げさせていただきました。