表裏一体

morgue
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離れて暮らしているので、長期休暇中は向こうの家に滞在していることが多い。現地に友達もいないので日中はやることもなく、私はただひたすらに家を掃除して、夕ご飯を作って帰りを待つようにしている。

仕事から帰ったとき、家で誰かの作ってくれたあたたかいご飯があることは日常の幸福度ランキングのかなり上位に食い込むということを社会人になってから強く自覚しているので、労いの意味も込めて作る。

今のところ、玄関を開けて開口一番「いい匂いがする」とボヤいてくれる。いつもボーッとしてるから心情が読めないんだけど、夕飯時だけは心なしかテンションが上がってるのも見て取れる。でもそれも毎日のものとなると、いつか言ってくれなくなるんだろうな。そして私も、これが日常になると作ることも億劫になって、めんどくさい気持ちが少しずつ錆びついて、なんの感情も湧き上がらなくなるんだろう。

少し前までは、洗濯物のにおいがそれぞれ違うからタオルを逐一かぎ分けるという、密かでささやかな変態じみた楽しみがあったんだけど、最近は鼻が慣れてわからなくなってきてしまった。こういうことだけ都合よく毎回忘れる消しゴムみたいなものがあればいいのに。

でもこれで本当に消しゴムがこの世にあったとして、明日いきなりいなくなったりしたら、私は消しゴムを使ったことを後悔するんだろうね。何事もうまくいかないものである。

@morgue
できるだけ、とても小さくて些細な、楽しかったこととか嬉しかったことを書くように努めます。未来の私とこれを読んでくれた人が、読み返すことで自分の幸せを振り返れるようにしたいので