今日も私は本を読むvol.7

守宮泉
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公開:2025/10/5

1週間、本を読みながら生活している守宮の様子をお届けします。

冷える朝が増えてきました。夜明け前の、しんとした空気に触れると、一瞬で頭が冴えます。そんな朝が大好きです。

週間読書日記(9/29-10/4)

今週は2冊の本を読み終えた。夏からずっと、通勤のお供にしていた本と、物語の本だ。最近はいよいよ近づいてくる試験のために、語学学習に勤しんでいる。時間を決めて、近所の図書館に行き、学習するとはかどることに気がついた。中学生の頃によくやっていた手法が今も役立つとは。行き帰りの時間が息抜きになっていいなと思っている。


『黒ばら先生と秘密のはらっぱ』の話

木地雅映子さんの本を読むのは、本当に久しぶりだ。マイナークラブハウスシリーズが好きで、よく読んでいたのを思い出した。

この本の主人公はどうやら保育園児である。「はんな」と呼ばれているその子は日本に住んでいて、仕事が忙しいお父さんと厳しいおばあちゃんと暮らしている。描写のほとんどは保育園での生活を示していて、保育士の「おねえさん」の労働環境の悪さや副園長先生の意地の悪さが保育園児の目で描かれている。

本が大好きな「はんな」は、新しくやってきた「ローズ先生」のことを「黒ばらのまじょ」だと思っている。彼女の魔法は素直になれない男の子の態度を変化させたり、保育園にできた穴に林をつくったりする。それは現実か空想か、わからないまま話は断片的に綴られる。

私はどの話も好きなのだが、特に「光る本」で「はんな」が構想している「100かいだててのいえ」が好きだ。4かいにあるというとしょしつには「やもりのししょさん」がいるらしい。私、それになりたい……と思った。いろいろな話のその後がわかる、最後の話も大好きである。

空想がもたらす救い、空想を壊さないでいる「ローズ先生」の優しさなど、全体的にふわふわしていてつかみどころのない回想の合間に流れているのは、あたたかさだ。すべてをぎゅっと抱きしめたくなってしまう。

「はんな」は達観している子だ。私の世界の見方と似ている気がする。もちろん見えているものは全然違うのだけれど、そういう見方もいいんだよと肯定されているようで安心するのだ。好きなフレーズをあげておこう。これは、ずっと言葉の意味を勘違いしていた当時の「はんな」に対する、現在の「はんな」の感想である。

なあんだ、と思った。

わたしもけっこう、素直にだまされる清らかな子どもだったんじゃん。よかったよかった。(よかったのか?)

――木地雅映子『黒ばら先生と秘密のはらっぱ』p.13

この言い回しがすごーく好きだ……。

木地雅映子『黒ばら先生と秘密のはらっぱ』中央公論新社(2025)

黒ばら先生と秘密のはらっぱ -木地雅映子 著|単行本|中央公論新社

『世界宗教史』1巻の話

エリアーデの宗教論に出会ったのは、大学生の時。なぜか『聖と俗』にたどりついて、卒論の参考にしたことを覚えている。そうだ、全然違う場所の研究者なのに、折口信夫と言っていることが似ていておもしろいなと思ったのだった。

そんなこんなで『世界宗教史』である。一度、宗教史というものをさらっておきたい、と思っていた矢先に見つけて喜び勇んで読み始めたのはいいものの、なかなか骨の折れる読書だった。その反面、とっても興味深い読書体験ができたのも事実である。

宗教学の概論的講義では、実際の宗教に関しては世界三大宗教といくつかの宗教儀礼くらいであまりがっつりとは触れられなかった。この本は「世界」と冠しているように、さまざまな宗教的産物を通時的に見ていく様式になっている。1巻は文明が生まれた頃からバビロニア、古代エジプト、カナン、ヒッタイト、イスラエルまでである。

とにかく中身が濃い。もちろんまだまだ深掘りはできるのだろうが、ぎゅっと情報が詰まっていて読み進めるのが大変だった。実際の本は3巻で、「数日中に読みおえることができるような短く簡明な著書」にしたかったらしい。1冊に1ヶ月半もかけてすみません、という気持ちになってくる。

宗教間のつながりについて考えるにはとても良い本だと思う。

宗教や思想についての本を読むと、普段の生活では決して意識しない、深みに潜っているような感じがする。地上にいるのに、地下深くにいるような、そんな感覚。その感覚に身を委ねているのは心地よくて、いつまでも浸っていたいと思ってしまう。そういうとき、もしかすると私は「深淵」を垣間見ているのかもしれない。おそらく、たぶん、ひょっとして。どこか遠いところに行けるのは、物語だけではないのだと最近気づいた。

たぶん、何度も読み返すことになるだろう。あと5冊の道のりは長いが、すべて読み切りたいなと考えている。

ミルチア・エリアーデ 中村恭子/訳『世界宗教史 1』筑摩書房 ちくま学芸文庫(2000)

『世界宗教史 1』ミルチア・エリアーデ | 筑摩書房

@morimiya
本をよく読みます。多言語世界で生きていきたい人です。 Bluesky bsky.app/profile/moriizu.bsky.social