1週間、本を読みながら生活している守宮の様子をお届けします。
かなり期間が空いてしまいました。ご無沙汰しております。守宮です。
夜、毛布を被って寝る日もあります。朝晩は涼やかな風が吹き、金木犀の花の香りがどこからともなく漂ってくるようになりました。すっかり秋ですね。
週間読書日記(10/6ー10/18)
先週お休みしたため、今回は2週間分。先週は3冊の本を読み終え、今週は1冊も読み終えていないという読書状況となっている。
まずは先週の話から。来たるイタリア語検定のため、勉学に勤しむ毎日だった。試験問題に取り組む度に覚えるべき構文や単語が増え、若干うんざりすることもあったが、毎日なにかしらの勉強はしていたと思う。そして迎えた受験の日は、なにがなんだかわからないまま終わった。当然、自己採点結果は不合格。そもそもの基礎があまり身についていないことを理解した。
"勉強"と書いているように、この1ヵ月のイタリア語学習は必要に迫られて行うものとなっていた。受検は己の力不足を痛感すると共に、なぜイタリア語を学んでいるのかを再確認する機会ともなった。というのも、夫に自分の改善点を伝えたところ、「試験に受かることが目的じゃないんでしょ?」と言われたのだ。その言葉ではっと気づいた。私がイタリア語学習を始めたのは、イタリア語で書かれた文学や思想を読むことで、日本語とは違う文脈を読み取りたいと思ったことがきっかけだった。
そこで私は考えた。文法固めはある程度できたのだし、もう原書に移ってもいい頃なんじゃなかろうか。わからなかったことはその都度確認していけばいい。ということで現在はイタリアで手に入れた小説や、NHKラジオ講座応用編の文章を読んだり書いたりして(しようとして)いる。自分の求めるものに近づくための手法に舵を切れたため、久しぶりに学習の楽しさを思い出した。やはり私は他者ありきで学ぶことには向いていないと思う。まず自分、それから他者、なのだろう。何の役に立つかわからない、そんな学びは"趣味"なのだろうか。個人的には、ハンナ・アーレントにちなんで"活動"と名付けたい気持ちがある。
そろそろ近況については置いておいて、本の話をしよう。
『ヒックとドラゴン1 伝説の怪物』の話
先月、実写版の映画を見に行ったので原作を読んでみることにした。1ページ開いたところで、映画とまるで違っていることに驚く。バイキングの子どもたちは男の子ばかりだし、ヒックの母親は生きている。バイキングたちはドラゴンを飼い慣らし、使役している世界での話だった。
あらかじめ断っておくと、どちらがいいという話ではなく、どちらもそれぞれ魅力的な物語に仕上がっている希有な例の1つだと感じた。
ヒックは、ただドラゴンに言うことを聞かせて奴隷のように扱うのではなく、意思疎通をはかろうと奮闘する。結局最後までうまくはいかないのだが、たぶんここでは結果ではなく過程が大事なのだろう。はるかな時間をかけて、ゆっくりと少しずつ歩み寄っていくヒックとトゥースレスの成長を見守る物語なんだろうなと思った。
話の筋とは関係ないのだが、挿絵が小学生の自由帳に描かれたもののようにのびのびとしていて楽しい。この本すべてが『ヒックとドラゴン』という作品になっているところがよかった。折を見てちょこちょこ続きを読んでいこうと思う。
クレシッダ・コーウェル 相良倫子 陶浪亜希/訳『ヒックとドラゴン(1) 伝説の怪物』小峰書店(2009)
『THE DESK』の話
日経WOMANの増刊号として編まれたのだろうこの本は、なにかしらの勉学に励んでいる大人たちの"机"に焦点を当てている。勉強内容というよりは、どのように勉強しているか。様々な立場の人たちを取り巻く環境が垣間見えておもしろかった。写真だけでなく、それぞれが学ぶ理由も収録されており、読み応えのあるものとなっている。
この本に取り上げられている人は、ほとんどが何かの役に立てるため(主に仕事)勉強している。このような例が多いのは、たぶん日経WOMANという雑誌の購読層が主に会社勤めをしている働き盛りの大人だからだろう。直接的な社会貢献に限らない学習について、人は多くを語らない。ひっそりと見えないところでやっているんだろうなと思った。発信されない学びも知りたいという矛盾を抱えているからこそ、私は自らの学習の一端を発信したいのかもしれない。
日経WOMAN/編『THE DESK リアルな「勉強机」から見えた大人の学び100のヒント』日経BP(2023)
THE DESK リアルな「勉強机」から見えた大人の学び100のヒント | 日経BOOKプラス
『在野研究ビギナーズ―勝手に始める研究生活』の話
今週読み終えたのは、この1冊だ。試験が終わり、資格取得も視野に入ってきた現在、長期的なテーマを決めてみてもいいかもな、と思って読んだ。幸いなことに私の周りには、研究に取り組んでいる人たちが何人かいる。その姿や大学に通った経験から、なんとなく研究はどこかに所属しなければできないと思っていた。どこにも所属しないで研究している人もいるらしいと知って驚いたし、よほどすごい人なんだろうとも考えていた。
しかし、この本で紹介されている人々は生活をしながら自らの探究心のために研究しているという人が多かった。地位や権力、功利といったものではなく、学問のために学問を行っている。そういう印象を強く抱いた。
組織に所属しない大変さはあれど、一定のしがらみからは解き放たれている自由を駆使して研究を続ける姿勢は、研究をするしないに関わらず、生き方として参考にできると思った。
そもそも、研究とは何だろうか。そういうところから考え直したいなとぼんやり考えている。大学という場を離れて数年経つが、学問に向き合う熱意は今の方があるかもしれない。それは今の環境のおかげでもあるし、今までの経験のおかげでもあるだろう。大学を卒業したら学問終わり、というような今の仕組みはなんだかもったいないという気持ちにもなっている。仕事のために学ぶこと、自分のために学ぶこと、どちらも両立できたらいいなあなんて思いながら、明日も私は本を読むのだろう。
荒木優太/編著『在野研究ビギナーズ―勝手に始める研究生活』明石書店(2019)