1週間、本を読みながら生活している守宮の様子をお届けします。
寒風吹きすさぶ季節になりました。年の瀬が近づいてきて、街がいっそうの賑わいを見せていますね。私もうきうきと楽しくプレゼントを準備しています。
週間読書日記(11/30-12/6)
今週は1冊の本を読み終えた。仕事が立て込んでいて、ばたばたした1週間であったが、読書(と夫)のおかげでなんとか乗り切ることができた。
今回は、推理小説について書き留めておこうと思う。
私の推理小説・ミステリ遍歴
みなさんは、推理小説もしくはミステリ(以下ミステリとする)と聞いてどのようなものを想像するだろうか。シャーロック・ホームズやアガサ・クリスティなどの古典の他、日常に潜むちょっとした謎を解くコージー・ミステリ、中高生が活躍する青春ミステリまで様々だろう。
私が最初に読んだミステリは、よく覚えていない。青い鳥文庫の夢水清志郎シリーズだったか、赤川次郎のみミステリーコレクションだったか、そのあたりだったような気がする。家族の中では母が多少ミステリを読んでいるくらいで、そこまで認知はしていなかったように思う。と、書いていて思い出した。母は海外のコージー・ミステリ(コージーといっても人は死ぬ)が好きで、よく読んでいたことを。旅行先で本を読み終えてしまった私が、そのへんにあったコージー・ミステリに手を伸ばしていたこともあった。時系列的にはほぼ同時だったように思う。小4~小5くらいの時期だったか。お茶探偵シリーズは母と一緒に追うようになった。
意識的に好きだと感じたのは、赤川次郎からだった。天使と悪魔シリーズや花嫁シリーズをちょこちょこ読んでいたような。なぜか三毛猫ホームズシリーズは読んでいない。
クラスでは、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズが流行していた。たまたま学級文庫にどんとシリーズが並べられていたのだ。私はその頃から流行り物には反発し、読んでいなかった。シャーロック・ホームズにも手をつけなかった。友人が貸してくれた全集をぱらぱら見たくらいだ。
中学生になった私は、創元推理文庫を知った。国内ミステリを意味するひよこ色の背表紙が本棚に並ぶようになる。米澤穂信、谷原秋桜子、大田忠司、坂木司、柴田よしき……。
ここまで書いて思い出した。もしかすると、私の初めてのミステリは北森鴻かもしれない。旅行先で、母に『ぶぶ漬け伝説の謎』を読んでくれとせがんだ覚えがある。
閑話休題。
創元推理文庫で比較的ライトなミステリをたしなんでいた私は、ようやく古典ミステリを読もうという気持ちになる。シャーロック・ホームズシリーズを読み始めたのが高校生の頃だったか。きっかけは有栖川有栖の国名シリーズに古典ミステリのトリックの話が出てきたから。もしかしてミステリは、古典を知っていて当たり前の世界なのかもしれないと気づいたのだ。トリックがある以上、完全なるオリジナルは難しいのだろう。和歌のように「本歌取り」をすることで新たな楽しさを見い出すジャンルが、ミステリだと私は思っている。
だが、シリーズものは長い。長いが故に飽き性の私は一気に読むことができない。だから、たまに来るミステリが読みたい時期を逃さないことが大切だ。この波を利用して、古典を少しずつ読み進める。私は、ミステリをそんな風に楽しんでいる。長々と書いてしまったが、つまりは現在、ミステリの波がやってきているのである。
『冬期限定ボンボンショコラ事件』の話
この本は、先程の遍歴にも出てきた米澤穂信の小市民シリーズ最終巻だ。中学生のときに読んで、いずれ出るだろう最終巻については忘れてしまうくらいの距離感でいた。アニメ化の話を聞いたときは、本当に驚いた。と同時に、終わってしまうのだろうなと感じた。シリーズの完結は、嬉しくもあり悲しくもある。特に、現在進行形で終わってしまうとかなり寂しい。だが、解説に「14年」とあったのを見て、長いな、と思ってしまった。私はちょうど人生の中で転換期が多い時期だったために忘れていられたが、ずっと待ち続けていた人もいただろうと思う。そう考えると、不定期に刊行される小説のシリーズものは罪深いように感じた。完結しないまま打ち切りになった(だろう)シリーズもいくつか知っているからなおのこと。今回は、終わって良かったという安堵が比重を大きく占めている。
読んだら終わってしまう、ということで1年ほどあたためていた最終巻。冬のこの時期に読むことができて本当に楽しかった。
学校での出来事が多い青春ミステリにしては異色も異色、病院で目覚めて身体の回復に努める小鳩くんの視点が続く。大きな動きはないのに読めてしまうのは、作者の筆力の高さ故だろう。ベッドの上の世界の狭さ、思い出したくないことを思い出してしまうほどの単調で退屈な入院生活が目に見えるようで、とてもよかった。何かしたいのに何もできない、高熱で動けないあの苦しみを思い出した(小鳩くんの入院生活は、それとは比べものにならないが)。
狭い世界の中、繰り広げられる謎解きは意外性ばかりで楽しい読書の時間を過ごせた。小市民とはいかなるものか、なぜそういう生き方を目指そうと思ったのか。二人の原点が語られる最終巻。すごくいい。もう一度最初から読み返したくなった。
個人的には、小山内さんの最後の言葉がとても、とても好きだ。少女にぶんぶん振り回される少年という関係性が好きな方はぜひ、読んでほしい。もちろん、シリーズの最初から読むことをおすすめする。入院生活とはいえ、おいしいスイーツも登場するので、ふくふくと幸せな気持ちになった。甘いものの持つ力は、文章で読んでも効果があるらしい。事件がビターなだけに、バランスがとれている。この本のおかげで、とっておきの新年を迎えられそうだ(ちょっと気は早いが)。
※シリーズのリンク先は1冊目であったり、特設サイトであったりしている。
米澤穂信『冬期限定ボンボンショコラ事件』創元推理文庫/東京創元社(2024)
追記
『江戸川乱歩傑作選 獣』の解題を読んでいて気づいたのだが、小鳩常“悟朗”って明智小“五郎”から来ている可能性があるかもしれない。たぶん。
ミステリが好きな理由、市井の生活や調査過程が好きということに加えて、オマージュが多いこともあるかもしれない。読むたびに発見があると楽しいですからね。