今日も私は本を読む vol.4

守宮泉
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公開:2025/9/15

1週間、本を読みながら生活している守宮の様子をお届けします。

曇りの多い毎日でなんだか気分が上がらないような、そうでもないような。天気には敏感でいようと心がけていますが、肝心なときに傘を忘れることもあります。

週刊読書日記(9/7-9/13)

今週は4冊本を読んだ。2冊は前々から読みかけていた本で、ようやく積ん読の山が減ってきたかのように思える。久しぶりに一気読みをしたこともあり、なんだかたくさん読んだなあという気持ちだ。

実感はないのだが、記録していると「結構本を読んでいるな」と感じる。メモを取りながら読んでいるのもよいのかもしれない。思考の一時置き場があることで流れを止めることなく読み進められる。


『スマホ時代の哲学』の話

この本はかなり話題になっているので知っている人もいるかもしれない。かく言う私は、単行本を書店で見かけて立ち読みした記憶がある。おもしろそうだったので、心の中の本棚にしまっていた。実際にその本を手に取ったのは、夫経由だ。コンパクトになっていたものの、一目見てあの時の本だとわかった。

読んでみると、ぼんやりと私の中にあったものが可視化されていくような、そんな感覚を覚えた。実感と知識がうまく結びついた、といえばよいのだろうか。すべてを理解することは難しいし、答えのある問いではないのだが、輪郭を摑むために学ぶきっかけとしていい本だったなと思う。基本的には、「長い時間をかけて考えを深めていくことも必要だ。そのきっかけとして哲学を学ぼう」という感じの内容だったような気がする。

作者は「自分の頭で考える」というふんわりした哲学的なものではなく、学問としての哲学を大切にしようというスタンスであった。ビジネス書のような形態でいて、中身はしっかり学術入門。意外性は十分にある。

私は、長考・考えすぎ・答えは一時的なもの、というようなスタンスで、作者の考え方とは親和するものもある。だからこそ、それが"良いこと"と思ったことはない。咄嗟に返答できなかったり、言い切ることが苦手だったり、会話のスピードについていけなかったり、どちらかと言えば"悪いこと"のように思っていた。とりあえず返答しなきゃ、スピードについていかなきゃ、と焦りを感じたこともある。だが、無理をすることは心身に過剰な負担をかける。最近はそういう焦りは消えたものの、世間の風潮は「タイパ」や「コスパ」、「効率」といったことを重視しがちだ。

こういった本を読むことは、自分だけじゃないんだな、と安心できると同時に、ゆっくり思考する楽しさが広まると私みたいな考え方も受け入れられやすくなるかも、という期待も感じる。どちらがいい、ということではなく、私的にはうまく使い分けができたらいいと考えている。ゆっくり考える時間も、めくるめく刺激を楽しむ時間も、どちらもバランスよくありたい。

谷川嘉浩『増補改訂版 スマホ時代の哲学』ディスカヴァー携書261(2025)

増補改訂版 スマホ時代の哲学 | ディスカヴァー・トゥエンティワン - Discover 21


『少女ポリアンナ』の話

ふと、「元気な女の子の話が読みたい」と思って借りてきた本。私の孤児へのこだわりや、少女は元気でポジティヴに描写してしまう癖は、児童文学から来ているのかもしれないと思った。

例のごとく、ポリアンナも孤児である。牧師であった父が亡くなり、一人で暮らす叔母ポリーに引き取られる。貧しく望むものは手に入らない環境で育ったポリアンナは、すべての物事に対して「喜べる点」を見つけるゲームをしていた。なんとも健気である。メイドのナンシーが思わず涙しそうになるのもわかる気がした。

印象的な言葉が時折出てくる。ミス・ポリーが度々口にする「義務」、チルトン先生の言う「プライド」……大人をがんじがらめに縛る言葉だ。基本的に、出てくる大人の心はかちこちに固まっている。道はひとつしかない、これが正しいと思い込んでいるのだ。よく言えば安定、悪く言えば変化を恐れて動かない。

ポリアンナは喜びを見つけることで、大人の心を解きほぐしていく。自分自身が大きな悲しみと寂しさを抱えながらも、懸命に。それを美徳としてはならないが、ポリアンナなりの処世術なのだろう。そんな彼女が絶望に打ちひしがれたとき、救われた大人たちが彼女を救うために行動を起こす。人を幸せにしてきたポリアンナが、幸せを見出す瞬間と言ったら! ありきたりではあるかもしれないが、私はこういう展開が好きでたまらない。本当に大好きだ。一方的に救われるのではなく、英雄のように救うのでもない、支え合う人間の生き様を見出すことができる。嬉しいことだ。

最後に、孤児の少年ジミーが言った言葉を引用して終わることとしよう。

どうせ、知らねえものはよく知ってるものよりよく見えるもんさ。大皿に盛ったジャガイモでも、遠くにあるのがいちばんでかく見えるのとおんなじだよ。(後略)

――エリナー・ポーター/谷口由美子 訳『少女ポリアンナ』p.167

 異なれば異なるほど知りたくなる私に、ぐさりと刺さった。知っていると思い込んでいることがこの世にはたくさんあるだろう。たとえば、今住んでいる日本という国の在り方とか。胸に刻んでおきたいと思った言葉だ。

エリナー・ポーター/谷口由美子 訳『少女ポリアンナ』岩波少年文庫(2002)

少女ポリアンナ/エリナー・ポーター, 谷口 由美子|岩波少年文庫 - 岩波書店

@morimiya
本をよく読みます。多言語世界で生きていきたい人です。 Bluesky bsky.app/profile/moriizu.bsky.social