全く怖くない心霊話ですが、苦手な方は回れ右してね。数年前。おばあちゃんが亡くなったあとの不思議な話。
おばあちゃんが亡くなった。ずっと実家で一緒に住んでいたおばあちゃん。かなり癖の強い人で、昔は工務店の社長なんてものもやっていたらしい。コミュニケーション能力は抜群で、明るくてお友達もたくさんいたけど、気は強いし、社長だったからなのか、悪い言い方をすると、「人をよく使って」いた。特におじいちゃんのことを。
そんなおじいちゃんはおばあちゃんの性格とは反対に、いつも穏やかでニコニコして口数が少なかった。優しいからなのか気にしていないだけなのか、色々やらされていても全然嫌がってなさそうに見えた。
「じいさんこれやっておくれ」「ほいほい」
「じいさんそっちじゃないよ!こっちやってくれ」「ほいほい」
そんな会話をしていたのを小さい頃から見ていた。だからこそ、おばあちゃんが亡くなったときは悲しみよりも、あんなに気の強い人が。という、びっくりの方が大きかった。
私は当時たまたま実家へ帰っていて、そんなおばあちゃんの死に目に遭うことができた。おばあちゃんが病院で亡くなったとき、おじいちゃんは家で待っていたんだけども、お母さんが亡くなったことを伝えた時、いつもニコニコしているおじいちゃんが俯きながら
「1人にしてください」
そう言った。おじいちゃんのあんなに悲しそうな声を聞いたのは初めてだった。その夜、私はようやく死に対して理解が及んだのか、信じられないくらい泣きながら眠り落ちた。
本編はこのあとからである。それはおばあちゃんのお通夜の後、寝ずの晩のことだった。
父母も含めた親戚たちがすでに高齢だったため、寝ずの晩を私と従姉妹がすることになった。運がいいのか悪いのか、身近な人が亡くなることが初めてで、蝋燭の火を消さないように朝まで寝ないで見るんだよというのをこのときに知ったような気がする。今は火災などの危険性から長時間変えなくてもいい蝋燭やお線香、ライトがあったりして、実際には葬式会場にそのまま泊まって、寝てしまってもよかったりするそうだ。(ここらへんのちゃんとしたマナーなどは知っている方の記事を読んだ方が参考になるかと思います)
従姉妹と私はお葬式の会場でおばあちゃんと一緒に布団を並べて、まるで修学旅行のように楽しい夜を過ごしていた。結婚の話とか、これからの人生をどうするかとか、そう言った熱い話を長々とそれこそ深夜まで語り合った。
とはいえ、隣には亡くなっているおばあちゃんがいる。でも、それは私のおばあちゃんなのだ。怖いとか不気味とか、そういうのは1ミリも感じなかった。家族ってそういうものなんだな、なんて思いながら深夜の女子トークは大いに盛り上がった。お葬式の会場で孫たちがこんなに盛り上がって深夜までうるさくするとは、おばあちゃん本人も思わなかったかもしれない。ごめんね。でも、そういう話おばあちゃんも好きでしょ。
深夜2時くらいになっても、私たちの盛り上がりは止まらない。しかし、そんなとき突然会話を中断せざるを得ない事件が起こった。会場に大きな音が響く。
ジャバジャバジャバジャバ
水だ。それはトイレの水が流れる音だとすぐにわかった。でもそれはありえなかった。なぜならば、この会場には私たち2人と亡くなったおばあちゃんしかいないはずだからだ。この会場はホール部分とトイレ、玄関だけの構成だ。トイレは男性と女性がしっかり分かれていたけど、ホール部分以外に部屋はない小さな会場だった。だからここ以外に人はいるはずがない。入り口の鍵も私が管理会社の人から渡されていたので、誰かが途中で入ってくることもなかった。なのにだ。入り口付近の水栓トイレは急に流れたのだ。
私は従姉妹と目を合わせて、トイレへと近付いた。
「誰か、いますか?」
従姉妹が変なことを言い始める。少し引いた。いるわけないでしょ。ちょっとテレビ見過ぎだよ。そう思ったけど、私はそれに対しては突っ込まずに、扉に手をかける。
戸を開けると、玄関の横に男性トイレと女性トイレが並んでいる。音がするのは男性トイレの方だった。
私は意を決して男性トイレの扉を開ける。そこにはまだ勢いよく水を流し続けている小便器があった。それはセンサーに反応して流れるタイプのトイレのように見えた。
私たちが来てもなお、その水は流れ続けていた。私は使ったことがないので仕組みはよくわかっていなかったけど、センサーに反応しなければ勝手に流れることはないだろうし、もしボタンを押して流すことができるものなのだとしても、「誰かが押して」流れるはずだ。では、誰が。私と従姉妹はホールの方で談笑していた。となると、答えはもう、1人しかいないのだ。
私は流れ続けるトイレを見てこう言った。
「ばあちゃん、そっち男子便所!」
そう言ったあと自然と水は止まった。ばあちゃんは間違えたことに気づいたらしい。
その後私たちは特段気にせずホールへと戻り、眠ることにした。
おやすみと2人に声をかけて何事もなく眠った。
その後、おばあちゃんの葬儀が終わった数日後に私は生まれて初めてのインフルエンザにかかった。お葬式でうつされとる!!!ってなったけど、40度の熱が出ている私は、もう眠ることしかできなかったのだ。
数日間、熱にうなされながら寝ていた。すると。突然夢の中におばあちゃんが現れたのだ。おばあちゃんは私にいつもの元気な声でこう言って、そして消えていった。
「ありがとね」
目が覚めて、ばあちゃんわざわざインフルエンザの時に言いに来なくても良いのに。そう思いながら泣いた。
ただ、今考えると今までありがとうねの意味ではなく、トイレ教えてくれてありがとねの可能性もあるか。
そんなふうに思えるくらいには月日が経ったのだ。
ばあちゃん、今もたまに夢の中でおじいちゃんと一緒に会いにきてくれる。
これからもずっと会いにきてほしい。
というちょっと不思議体験の話でした。