【注意書き】
・作者はホストクラブ未経験のため、システムやお酒は勝手なイメージです。ファンタジー世界のコメディ作品として認識をお願い致します。
・こちらは過度な飲酒をおすすめするものではありません。
・本作品のシナリオは各キャラにモデルのいる当て書き台本となります。キャラクター性を参考にさせていただきました。モデル演者のみなさまありがとうございます。
・本作品のシナリオはフィクションであり、実在する人物、イベント、地名、団体などとは一切関係ありません。また、特定の思想、信条、宗教などを擁護あるいは非難する目的をもって書かれたものではありません。
以上ご確認いただいた上でのご利用をお願い致します。
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「club Rain~それは今宵限りの夢物語~」
※こちらは声劇台本置き場にも掲載予定です。
☆そこそこ有名なホストクラブで繰り広げられる色恋物語。全て作者の妄想世界のため、実際のホストクラブとは別物、リアリティのないコメディ台本としてお楽しみください。
☆5人台本ですが、ホストの人数を減らしても演じて頂けます。英子のセリフ数が膨大なため添削OKです。アレンジもアドリブもご自由にして頂き、今宵限りの夢物語を皆様でお楽しみください。
【配役】ホスト役:4人 姫役:1人(不問:5人)
ユタカ:この店のNo. 1ホストで圧倒的な王子様。接客は紳士的で姫が望む男性を演じるのがうまい。太客が多く、桁違いの売上をあげるが、腹黒い一面も。
李央(りお):2番手から抜けられないチャラ男ホスト。スキンシップが多い。姫達へガチ恋営業しているためアフターも忙しい。同期の麦をライバル視している。
那月(なつ):期待の新人ホスト。あどけなさが残る素朴な接客に年上の姫達から絶大な人気を誇っている。根が真面目なため、姫達のことを本当に心配してくれる。綺麗なままでいて欲しいと言われる。
麦(ばく):ノリの良いムードメーカー的なホスト。楽しく話せる反面はっきりと意見を言ってくれるため、太客は多くないが指名は最多。友達ノリに見せかけて裏でガチ恋している姫が多いとか。
英子(えいこ):彼氏に振られてやけになり、初めてホストクラブへ来てしまった女性。オタク素質があり、頭の中の自分との会話がとても多い。頭の中は早口オタク。
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【プロローグ】ホスト:4
ユタカ:ようこそ、club Rainへ。あなたの心を幸せで満たせるように、精一杯ボクたちがおもてなしをさせていただきます。
李央(りお):いっぱい飲んでいっぱい話して、2人きりでオレと楽しい時間を過ごそ?
那月(なつ):お酒、無理して飲まなくてもいいですからね。僕たちの夜はまだ長いんですから。
麦(ばく):じゃあ一緒に乾杯しよっか。何にって、2人の出会いに? なんてね。
ユタカ:姫はどうしてボクを選んでくれたのかな。ねぇ、教えて?
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麦(ばく):あなたを夢の空間へ。
那月(なつ):club Rainは姫たちのご来店をお待ちしております。
李央(りお):楽しい夜をオレたちと。
ユタカ:甘くて素敵な夢を共に過ごそう。
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【とある日】姫:1
英子:(頭の中)ど、どうしよう、ついに来ちゃったホストクラブ。彼氏に振られた腹いせで来てみたのは良いものの、絶対場違いな気がする!
英子:(頭の中)そりゃあ、多少はおしゃれしてきたけど、周りのお客さんも綺麗な人多いし、それになにあの人!? 肩に頭乗せてベタベタしているー! あんな0(ゼロ)距離にイケメン顔がきたら、私耐えられない、消滅しちゃう!
英子:(頭の中)どうしよう。やっぱ1人で来るんじゃなかった。早々に話を終わらせて早めに帰ろう!
英子:は、はい。そうです、えぇ、初めてで。え、体験コース? では、それで。
英子:(頭の中)体験コースは数人のホストが少しずつご挨拶してくれるのかぁ。どんな人が来てくれるんだろ。緊張で吐きそうになってきた。
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【Side_李央】ホスト:1 姫:1
李央(りお):Side李央。
李央(りお):失礼します、本日お席につかせていただく李央って言います。隣に座ってもいいですか?
英子:は、は、はい!
李央(りお):では、失礼しますね。
英子:(頭の中)えー!? 美麗イケメン。顔が良! すごい、良い匂いもする。すでにもう無理どうしよう助けて。
李央(りお):あれ、緊張してます? もしかしてこういうお店初めてだったりして。
英子:実は、そうなんです。
李央(りお):まじですか? そっか。じゃあ、たくさんおもてなししなくちゃですね。えっと、お姉さんのことなんて呼べばいいかな?
英子:英子(えいこ)です。
李央(りお):英子さんね。ねぇ、英子さんは何か飲む? はい、これ。飲み放題メニューね。
英子:うん、え、えっと、じゃあウーロンハイで。
李央(りお):はーい、了解。あー、もしよかったらなんだけど、俺も英子さんと乾杯したいから同じものもらってもいいかな。
英子:そ、そうですよね、わかりました!
李央(りお):ありがとう。ウーロンハイ1よろしく。
英子:(頭の中)あれ、そっか、これ李央くんの分は飲み放題には入らないのか。でも乾杯はしないと、なんだよね? たぶん。これくらいならまぁ仕方ないか。
李央(りお):じゃ、乾杯。
英子:か、かんぱい。
李央(りお):ふふ、なんか嬉しいな。
英子:嬉しい?
李央(りお):うん。だって、こんな可愛いお姉さんの初めての経験をこのオレがもらっちゃったわけでしょ? もらったというか、奪っちゃったというか。
英子:ひっ……え、えっと。
李央(りお):ふふ。英子さんかわいい。
英子:(頭の中)あーーあーー、めっちゃ目を見てくるぅ! 覗き込んでくるー!
李央(りお):英子さんの初めて、もっとほしくなっちゃうな。
英子:えっ!? もっと、って。
李央(りお):例えば、そうだな。うーん、あ! 初めてのイチャイチャとか?
英子:イチャイチャ!??
李央(りお):そうそう。英子さんと俺が。イチャイチャするの。
英子:っ!
李央(りお):あ、ごめん。
英子:すみません! 嫌とかじゃなくて。え、えっと肩抱かれるのは、まだちょっと恥ずかしくって。
李央(りお):こっちこそごめんね。初回なのにちょっと積極的になっちゃった。
英子:う、ううん。大丈夫。ちょっとびっくりしちゃったけど。
李央(りお):でも、さっきの照れた顔、めちゃくちゃ可愛いかった。
英子:(頭の中)いやー、まずいってまずいって! この距離感でその良き顔。落ちてしまうううう! このままでは相手の思うツボ。きっと李央くんは私以外のいろんな人へ同じようなこと言ってるんだから、気をつけて私。
李央(りお):じゃあさ、もしまた会いに来てくれたそのときには、俺のこの手と英子さんのこの手を、ぎゅってしてもいい?
英子:へ?
李央(りお):こうやって、指と指を交互に絡ませて。恋人繋ぎ、したい。
英子:(頭の中)エロ。え、エロいな。助けて神様。嘘、ありがとう。このままでいさせて。生きとし生けるもの全てに感謝を伝えたい。
李央(りお):ふっ、なーんてね。でも、手繋ぎたいって思うくらい、英子さんのこと気に入ってるのはほんと。
英子:か、考えておくね。
英子:(頭の中)こ、これがホストかぁ。いや、こわ、怖すぎる。そしてですね、あの、……膝が触れてるんですよ。膝と膝がごっつんこしてるんです、はい。これはあれだ、わざとだな。肩抱かなかった分、膝ってわけねー。ほうほう、やるねぇ。李央くんの体温が伝わってくるうううう!
李央(りお):英子さん、めっちゃ可愛い。
英子:むり……(好きすぎての意味)
英子:(頭の中)その後の会話はあまりよく覚えていない。すぐに終わりの時間が来てしまって、取り合えず連絡先LIME(ライム)のアカウントを交換した。
李央(りお):次来るときには、もちろんオレのこと指名してよね(ちゅっ)。
英子:(頭の中)左手の甲から伝わってきた彼の唇の感触は、この世のものとは思えないほど柔らかくとても艶やかに感じた。ホストこっわ!
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【Side_那月】ホスト:1 姫:1
那月(なつ):Side那月(なつ)。
那月(なつ):こんばんは、はじめまして。お隣、失礼します。
英子:はい……どうぞ。
英子:(頭の中)あれ、なんかあまりホストっぽく見えない子だな。童顔だし素朴なかんじがする。
那月(なつ):僕、那月っていいます。お姉さんは英子さん、で合ってますか?
英子:うん、合ってるよ。
那月(なつ):よかった!
英子:(頭の中)はい、可愛い笑顔がクリーンヒット! はいはい、なるほどね、ええ、理解しましたよ。あなたはそのポジションなのね! 承知承知!
那月(なつ):あれ、英子さんグラス空いてる。何か頼まれますか?
英子:うん、ありがと。えっと、那月くんも何か飲む?
那月(なつ):いえいえ、そんな初回から頂くわけには! ん? え、なんですか? は、はい……わかりました。
英子:ボーイさん? 何か言ってたみたいだけど、どうかしたの?
那月(なつ):えっと、せっかく姫が乾杯を誘ってくれているんだから、ちゃんと好意を受け取りなさいって。すみません、実はまだこういうところで働くのに慣れていなくって。
英子:ふふ、そうなんだ。もしかしてまだ学生さんだったりするの?
那月(なつ):いえ、一応卒業はしてるんですけど、童顔なので若く見られるんです。今年で24歳なんですけどね。
英子:そうなんだ!? 確かに服装によってはもっと若くも見えちゃいそう。
那月(なつ):うーん、そんなに僕って子供っぽく見えるんですかね?
英子:子供っぽいというよりは、初々しい感じかな。かわいくていいと思うけど。
那月(なつ):かわいい、ですか。本当はかっこいいって言われたいんですけどね。英子さんから見て、僕って男性に見えませんか?
英子:見えてる見えてるよ! かわいいって言ったのは、なんか、かっこいいの言い換えというか、かっこいいのジャンル違いっていうか。
那月(なつ):ジャンル違い?
英子:私の中ではだけど、かっこいいのジャンルが、ムキムキ身体的にっていうのと、優しくて紳士的にっていうのと、抱きしめたい愛くるしさ的に、っていう3種類あるんだよね。
那月(なつ):じゃあ僕は、抱きしめたい愛くるしさ?
英子:そうそう!
那月(なつ):ふぅん。英子さん、僕のこと抱きしめたいって思ってるんだ。
英子:あっ、えっと、それは。
那月(なつ):なんか、恥ずかしい。
英子:(頭の中)あーーあーー、だめです。顔が赤くなってる。何この子、可愛すぎじゃない? まずい、なんか、餌付けしたくなっちゃう!
英子:那月くんは、何が飲みたい?
那月(なつ):ありがとうございます。じゃあお言葉に甘えて。うーん、英子さんに選んでもらおうかな。いいですか?
英子:もちろん。そうだなぁ。那月くんの酔ってるところ見たくなっちゃうから、これとかは?
那月(なつ):それって。英子さん、無理されてませんか。
英子:え?
那月(なつ):ここはもちろんそういう場所ではありますけど、今日は体験ですし、あなたが楽しく飲める範囲で構いませんよ。
英子:……那月くん。
那月(なつ):僕はまた英子さんに来てもらって、もっと時間をかけてお話したいって思っていますので。あ、でも英子さんが一緒に飲みたいのであれば、その意見を尊重しますけどね。
英子:なんて、いい子なの。
那月(なつ):え?
英子:なんでもない! じゃあ、これは次また会った時にしよっかな。今日は、ビール一緒に飲も?
那月(なつ):承知しました。へへ、ビール好きだから、嬉しい。
英子:トゥンク。
那月(なつ):え?
英子:ごめん、こっちの話だから気にしないで!
那月(なつ):ふふ、変な英子さん。ちょっと待っててくださいね。
英子:(頭の中)その後2人で乾杯して時間が来るまで和気藹々と話した。連絡先を聞こうとしたけど、初回だからと逆に断られてしまい、めちゃめちゃ恥ずかしかった。穴があったらはいりたい。
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【Side_麦】ホスト:1 姫:1
麦(ばく):Side麦(ばく)。
麦(ばく):あ、お姉さんこんにちはー。
英子:こ、こんにち、は?
麦(ばく):そっか、こんにちはじゃなくてこんばんは? ま、どっちでもいっか。次は俺だからよろしくねー。
英子:は、はい、よろしくお願いします。
英子:(頭の中)この人、ちょっとコワモテな感じ。ワイルドイケメンだ。わぁ、肩幅も大きくて胸板も厚……え、胸元見えすぎじゃない? いいの、そんなところまで見ていいの? お腹冷えない!??
麦(ばく):よいしょ。あ、じゃあ早速だけど乾杯しようよ。
英子:は、はい。えっと、何か、頼まれます?
麦(ばく):んー、いいよいいよ、前の席から持ってきてるから。はい、お姉さんもグラス持って。
英子:えぇ!? それっていいの?
麦(ばく):だって、残してきたらもったいないでしょ? はい、乾杯乾杯!
英子:かん、ぱい。
麦(ばく):っ……はー!! うま。お姉さんって結構飲むタイプ? グラスもう空じゃん。おかわり頼んであげる。
英子:(頭の中)え、え、何この人。なんだろ、久々に会った友達みたいな距離感じゃん。やばい安心するな。いや待て待て英子よ。彼の胸元をもう一度よく見るんだ。あなたの友人にこんなシャツをはだけさせたりする人がいるのか、いやいない。
麦(ばく):……ばく。
英子:え?
麦(ばく):俺の名前。漢字で「麦(むぎ)」って書いて「バク」って読むの。
英子:珍しい名前だね。覚えやすい。
麦(ばく):でしょ? あとねー、発泡酒が好きなんだよね。それもあってバクなの。
英子:ふふ、何それ。
麦(ばく):ウケるでしょ? 友達からは、むぎって呼ばれたりもするから、どっちで呼んでくれてもいいよ、英子ちゃん。
英子:あ、名前。
麦(ばく):うん、さっき聞いてきた。ちゃん付けで呼んでもいい? 堅っ苦しいの嫌でさぁ。
英子:親くらいにしか言われてないから、なんかちょっと恥ずかしいかも。
麦(ばく):あー、じゃあエイ。エイちゃん?
英子:ふふ、なんか魚の名前みたい。
麦(ばく):それはそう。うーん、なにがいいかな。
英子:エイでもいいけどね。
麦(ばく):んーんーんー、あ、じゃあ。思い切って呼び捨てでもいい? 英子。
英子:グハッ!
麦(ばく):?
英子:(頭の中)な、なにこの破壊力!? 今までの人がみんな「英子さん」って「さん」付けだったから、突然の呼び捨ては、愛に飢えたこのボディに効く。
麦(ばく):いやだった?
英子:いや、じゃないです。
麦(ばく):じゃあ、英子ね。改めてよろしくー。の乾杯。
英子:かん、ぱい……
麦(ばく):やべ、もう俺のないわ。新しいのあけないと。
英子:あ、うん。
英子:(頭の中)そっか、ここはホストクラブ。最初の会話で全然そんなそぶりなかったから、一番話しやすいかもって思ったけど、みんなドリンク入れるよねぇ。どんなに親しくしても所詮、私はお客様なんだから。
麦(ばく):安心して。俺のポケットマネーだから。
英子:へ?
麦(ばく):俺さぁ、発泡酒飲みたいんだよね。だから、こっそり自前で持ってきてるの。ねぇ、そこの君、あれ持ってきて。(ボーイに話しかけている)英子も一緒に飲む?
英子:自前!?
麦(ばく):だってオーナー俺の好きな発泡酒入れてくれないんだもん。だから、こっそりやってるの。
英子:……はははは。
麦(ばく):あと一本しか今日の分残ってないから、半分ずつね。
英子:いいよいいよ、全部麦くんが飲みなよ!
麦(ばく):そっか。お、キタキタ。ありがと。(受け取る)プシュッ…………はー!! やっぱこれこれ!
英子:ふふふ。
麦(ばく):気まぎれた?
英子:え?
麦(ばく):何か嫌なことあったんでしょ。
英子:なんで、わかったの。
麦(ばく):んー、なんとなく? まぁ、また遊びにきなよ。俺いつもいるし。話したいこととかあれば聞けるしさ。ついでに一緒に愚痴も言えちゃう!
英子:うん、ありがと。
麦(ばく):ん? あー、もう時間だって。英子、またおしゃべりしよね。じゃーねー。
英子:(頭の中)ホストって、本当はこんなかんじなのかな。こうやって色んなことに気づいてくれて、色々笑わせてくれて。優しいな。また喋りたいかも。にしても、バクくんお酒一回も入れてないけど、それホストとして大丈夫なのかな。
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【Side_ユタカ】ホスト:1 姫:1
ユタカ:Sideユタカ。
英子:(頭の中)んー、まずいな。めっちゃ酔っている。楽しい、そう。楽しいのはいいのよ。でもね、私は体験で来ただけだったよね。なのに、なぜこうなってしまっている? 何杯飲んだんだい英子……club Rain、なんて恐ろしい場所なの。次は、時間的に最後の人か。今度こそ、今度こそは抑えて早々と切り上げさせてもらおう。
ユタカ:失礼します。お待たせしてすみません。
英子:あ、いえいえそん、な。
ユタカ:ボクもお隣よろしいでしょうか。
英子:……
ユタカ:どうかされましたか?
英子:い、いえ! どうぞ!!
ユタカ:それでは、失礼します。
英子:(頭の中)何この人、イケメンすぎん? 美じゃん。美の化身じゃん。まつ毛も長くて目鼻立ちもくっきりしてて、お人形さん? お人形さんが動いているの? 美しいのレベルを超えすぎでは?
ユタカ:初めまして、英子さん。ユタカって言います。短い時間となってしまいますが、少しでもあなたと楽しくお話できたら嬉しいです。
英子:こ、こちら、こそ……あ、あれ。
ユタカ:どうかされましたか?
英子:えっと、ユタカさんってもしかして、あの入り口に飾ってあるNo. 1って写真の?
ユタカ:あぁ、そうですね。少々前の写真なのでお恥ずかしいのですが。
英子:な、ナンバーワンの人じゃないですか!? そんな人を、体験しにきただけのこんな小娘に付けていいんですか、偉い人!!
ユタカ:英子さん?
英子:はっ、いけない、心の声がそのまま口に。すみません!!
ユタカ:ふふ、英子さんって綺麗なだけじゃなくて面白い方なんですね。ちょっと安心しました。
英子:えっ。
ユタカ:お綺麗だったので、どんな方なんだろうなと。少し緊張していたんですよ。
英子:そ、そんな!あなたの方が100倍くらい綺麗ですよ!
ユタカ:ふふ。でも、英子さんも本当にお綺麗だと思いますよ? そのワンピースもとっても素敵です。ライトブルーかわいいですね。
英子:あ、ありがとうございます。この色とっても好きなので、だから、ネイルもお揃いの色にしていて。かなりシンプルですけど。
ユタカ:ほんとだ。シンプルだけどこのラメの載せ具合とか、ここもグラデーションになっててかわいいですね。この胸元のアクセにも合ってる。
英子:(頭の中)ユタカさん、私が見て欲しいところ全部わかって見てくれている。さりげなく手を取られているけど、自然というかいやらしくないというか。
ユタカ:あれ、英子さんの手冷たい。空調寒いですか。
英子:い、いえ、さっきこのグラスを握りしめてたからで。皆さんと話してると、こう、なんか暑くなっちゃって。
ユタカ:そうですか。あの、英子さんってどんな方がタイプなんですか?
英子:タイプですか、そうですねぇ。紳士的で優しくて……私のこと、ちゃんと見てくれている人、とか。
英子:(頭の中)って、ユタカさん私の手ずっと離してくれないんですけど。ホワイ。なんで。
ユタカ:見てくれている人ですか。じゃあ、例えばボクみたいなのはどうですか?
英子:へっ!?? ど、ど、ど、ど、ど、どうって!?
ユタカ:ボクは英子さんのことしっかり見て、優しくして、たくさん甘やかしますよ。
英子:……
ユタカ:ダメですか?
英子:そんなことは全然! むしろ良すぎるというかなんというか。
ユタカ:ふふ、よかった。英子さんの手暖かくなってきた。
英子:……へ?
ユタカ:冷たかったので心配していました。
英子:な、なんだ、そういうことですか! 冗談やめて下さいよ。
ユタカ:もしかして、身体火照っちゃった?
英子:ほ!?? ……は、はい、たぶん。
ユタカ:ふふ、英子さんのタイプがわかったかもしれません。
英子:ええ?
ユタカ:すみません、そろそろお時間のようです。
英子:もう、そんな時間。
ユタカ:寂しいですか?
英子:え。
ユタカ:良かったら、またいらっしゃってください。(小声)でも、次会ったときは英子さんのこともっと火照らせちゃうかも。
英子:ひゃっ!
ユタカ:では、失礼します。
英子:(頭の中)その後のことは以下略。私はお会計の金額を見ることなく、ボーイにカードを手渡した。きっと来月の私に怒られてしまうだろう。色んな意味で、今夜のことを一生忘れることはないと、そう思った。
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【おまけ:見送り指名】ホスト:4 姫:1
英子:(頭の中)はぁ、終電までもう少しかぁ。急いで帰らないと。
英子:え、お会計前に、お見送り? さっきの誰かを一人指名するんですか!??
英子:(頭の中)えええええ、そんな制度があるの!? 何それ、誰かを選んだら他の誰かが選ばれなくなっちゃうじゃんよ。なんてひどいことを。むしろこんな小娘に見送りなんて必要ないから! 色んな意味で気まずくてみんなに顔合わせられないから!
英子:えっと、決められない時は、どうすればいいですか?
麦(ばく):ん、なになに見送り決められないの?
英子:わっ!!! びっくりした。バクくん。
麦(ばく):俺今ちょうど暇だし、やろうか?
英子:えっ、いいの?
李央(りお):おい、なに抜け駆けしてんだよ。そんなこと言ったら英子さんが気を遣ってお前を選ぶしかなくなるだろうが、このタコ!
麦:俺イカの方が好きだけど。
李央(りお):そんな話してねぇんだよ! オレのお客を横取りするなって言ってんの。
麦:英子は今日初回だろ、お前の指名じゃないじゃん。
李央(りお):「これから」指名してもらうんだよ。英子さんごめんね、本当はオレがいいんだと思うけど、でも形式上は聞かないといけないからさ。
麦:お前こそ図々しすぎるだろ。
李央(りお):あぁ!??
那月(なつ):…….あの、そもそも選ぶ前にこうやってお話するのって、ダメじゃなかったでしたっけ。英子さんも、困ってる。
李央(りお):なんでお前までここにいるんだよ! 那月は黙ってろって。英子さんはお前のタイプじゃないじゃん。
那月(なつ):英子さんからしたら僕はそういう対象じゃないのかもしれないですけど、でも、僕からしたら英子さんはそういう対象ですもん。
英子:うっ!!
麦:あ、英子がくらってる。ウケる。
那月(なつ):それに、ルールはちゃんと守らないとだと思います。見送り指名は平等であるべきです。
李央(りお):……新人のくせに。
麦:あー、李央が負けた。
李央(りお):負けてない!
那月(なつ):英子さん、お2人のことは気にしないでください。本心でいいんですからね。
麦:はは、なんか今日の那月はやけに食い下がるじゃん。もしかして英子の指名狙ってんの?
那月(なつ):そんなこと! は、ないと思ってますけど。でも、今日お話できて嬉しかったのでつい。
麦:そう言ってアピールするんだー。俺たちとやってること変わらないじゃん。珍し。
那月(なつ):えっと、すみません。でも!
ユタカ:みんな、こんなところに集まって何してるの。
麦:やば。(3人同時)
李央(りお):げ。(3人同時)
那月(なつ):あ。(3人同時)
ユタカ:お席にいる姫たちのことを放っておいたらダメじゃないですか。みんなちゃんとルールはわかっているでしょう?
李央(りお):っち。なんだよその口調。気持ち悪。いつもそんな喋り方しないくせに。
ユタカ:李央、何か言った? 姫の前くらいちゃんとした言葉遣いをしなくちゃ。ねぇ?
李央(りお):……はいはい。わかったよ。
ユタカ:麦もだよ。ルールだからね。英子さんが素敵だからと言って、取り合いは見苦しい。
麦:へいへーいっ。黙ってますよ。
ユタカ:那月も。今日は珍しいね。姫を最後までもてなしたい気持ちは素敵だけど。
那月(なつ):はい、すみませんでした。
ユタカ:すみません、英子さん。ボクからも謝らせてもらいます。
英子:いえいえ私は別に。
英子:(頭の中)私を取り合ってイケメンたちが喧嘩するとか、どこぞの少女漫画じゃん。いや、冷静に考えたら今回の場合は「私を」じゃなくて、「私の財布」か? まぁ、どっちでもいいか。なんか幸せだし。第一、お金も払わずに夢を見る方がおかしいって話なのよ。夢を見せてもらうならそれ相応の対価は必要よね。……私って、めちゃくちゃ都合がいい客なのでは。
ユタカ:英子さん、お見送りのご指定に悩んでいらっしゃるとのことなので、今日は謝罪の意味も込めて、ボクがお見送りさせて頂いてもいいでしょうか。この店のNo. 1として。いいかな、みんな。
李央(りお):わかったよ!(3人同時)
那月(なつ):すみません……(3人同時)
麦:はいよー。(3人同時)
英子:私は、もう、どなたでも嬉しいです。ありがとうございます、ユタカさん。
ユタカ:……ではこちらへ。
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ユタカ:最後にお見苦しいところを見せてしまってすみません。
英子:いえいえ、逆にみんなが取り合ってくれるという夢のような経験ができたので、ある意味よかったです。……あ、頭の中の言葉が口に出ちゃった。
ユタカ:ふふ。やっぱり面白い子だった。ねぇ、英子さん。
英子:んー?
ユタカ:ボク、あんまり初回の方にはお見送りとかしたりしないんですよね。
英子:そっか、そうですよね。だってNo. 1ですもんね。へへ、なんだか優越感ある。
ユタカ:はは、言ってる意味わかってますか?
英子:んん?
ユタカ:あなたが特別だって言ってるんですよ。
英子:!??
ユタカ:でも、ボクは姫たちみんなを平等に愛している。だからボクを指名していないあなたを特別に扱うことは、もうできない。
英子:う、ん。
ユタカ:だから、英子さんがボクから特別扱いをされたいって思うんだったら。ちゃんとボクを選んで。そして、選んでくれたのであればその時は。
英子:その時は?
ユタカ:とびっきり極上の夢を見せてあげる。
英子:……っ!
ユタカ:本日はclub Rainへお越し頂きありがとうございました。姫がまたいらっしゃる時を、心よりお待ちしております。
英子:は、はい……
ユタカ:お気をつけてお帰りください、姫。
英子:(頭の中)そう言って、ユタカさんは私をタクシーに乗せた。気が付いたら終電は終わっていて、私は少しだけ車に乗ると、あとは歩いて帰った。どんだけ歩いても酔いは覚めず、家に着いた途端にそのまま布団へと倒れ込んだ。私が酔っているのは酒になのだろうか、それとも彼らになのだろうか。答えは出ぬまま、私はゆっくりと目を閉じた。
【エピローグ】ホスト:4 姫:1
李央(りお):夢か現実かなんてどうでもいいだろ? オレだけ見てろよ。
那月(なつ):姫のこともっと笑顔にしたいです。僕、もっと頑張りますから。
麦:乾杯しよ。嫌なことなんて、俺が忘れさせてやるって。
ユタカ:あなたがボクを求めてくれるのなら、何度でも見せてあげますよ。醒めることのない、こちらの世界をね。
英子:club Rain、それは今宵限りの夢物語。
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台本END