『予言の島 / 澤村伊智』を読んだ。

morrymorbid
·

本編の核心的な内容を極力含まずに記載する。

著者の書籍を読んだのはこれが初めてで、映像作品の映画『来る』を観たことがあるくらいだ。

感想としては非常に面白かった。2週目を読み終えた後でもパラパラとページを捲るくらいには名残惜しさを感じている。

概要を説明すると、主人公とその友人を含む一行が慰安旅行を兼ねて、幼少期にテレビや雑誌で目にしていた霊能者の予言が的中するのかを確かめるために辺境の島を訪れ、それによって引き起こされる悲劇が描かれる。ホラー作品を見慣れている方々からすると「こいつらろくな目に合わないな…」と感じるに十分な導入である。

しかしながらそれだけではなく、以下のような因習村的な要素がふんだんに散りばめられている。

怪しげな霊能者とその信奉者

「山に入るな。(予言で記された日の当日は)外にも出るな。怨霊に殺される。」と警告する長老然とした老人

「山に登らはったんでっか?」

魔除けのお守りとして言い伝えられている様々な形状の真っ黒なオブジェ

死体に関する謎の儀式としきたり

極めつけはそんな因習村要素につられてきた読者を投影したかのような人物が登場し、「日本的でおどろおどろしい、土俗の息づく土地がこの霧久井島なんです。僕はこんな場所に憧れていた。まさに三津田、まさに京極、まさに横溝獄門島」なんて発言をする。この時点で私はニヤニヤしながら読んでいた。あとがき読了後の今思えばまんまと著者の思うつぼだったのだろう。

タイトルにもなっているように、本作は著名な霊能者が亡くなる直前に残した最後の予言とその舞台とされる霧久井島を中心に話が作られているが、読み進めていくと『呪い』もキーワードになっているように思える。プロローグとエピローグを除き全5章で構成されている中で、最終章である5章の章題も『呪縛』である。

1章の冒頭で主人公の友人『宗作』は会社のパワハラに耐えかねて自殺を試みる。作中でもこれを引き合いにして次のように言及されている。

呪われていない人なんていない。みんな誰かに‐誰かの言葉に縛られて、振り回されて生きてる。

『呪い』というキーワードと上記の台詞、そして最後に明かされる真相に対して、正直なところ身につまされる思いだった。ネタバレを避けるため詳細は記載しないが、他人事とは思えないと感じる読者は私以外にも少なくないのでは、と思う。

さいごに。私が読んだのは文庫版で、角川ホラー文庫から出版されている。ホラーといえば怨霊や殺人鬼が定番だろうし、最近ではそういったものから外すように、悪意をもった生身の人間が怖いタイプの作品も増えてきたと感じる。そんな中で、私はこの著者のホラー作品をもっと読んでみたくなった。冒頭に記載した映画『来る』の原作が含まれている比嘉姉妹シリーズを手に取ってみるつもりだ。当然ながら怖いのだろうが、怖いだけではない、何か惹かれるものに触れられることを今から楽しみにしている。

@morrymorbid
根がネガティブっつって ガハハ