僕はアプリを開発していた

mos
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僕はアプリを開発していた。

スマホが世に出て、いわゆるガラケーに取って代わろうとしていた頃だ。

僕の方は当時1人目の子供が生まれたばっかりでどこにも行けず、子供の世話と家事以外はたくさん時間があった。

情報がほとんどない状態でstackoverflowを開きながら手探りでアプリを開発していた。

そんな時代だった。

三作目くらいに公開したアプリはめちゃくちゃヒットした。

手前味噌ながらいいアイデアのアプリだったと思う。今も存在するから過去形はおかしいのかもしれないが。

端末メーカーであり、アプリストアを主催する世界的企業の日本法人から連絡をもらった。

「会いたい」と。

会う目的はあまりよくわからなかったが、アプリストアの売上の分け前をもらっている身としては会わない理由は特になかった。

日本法人の本社に行った。

一対一でお話をした。

雑談の域を出ない程度の話だった気がする。

数ヶ月後、その企業は新しい端末を販売した。

僕が開発したアプリのアイデアを取り入れて。

たぶんスマホを使っている人はほぼほぼ使っていると思われる機能だ。

僕は考えた。

本社に乗り込んで話をしたとき、相手は何をしたかったのだろう。

少なくとも雑談をしたかった訳ではないだろう。

何か法的に揉めたときに勝てそうな相手かどうかを確かめる、という目的だったのかもしれない。

僕は若かった。

世界的大企業に突然招かれる、というだけでちょっとだけ浮かれた。

じゃもし今、同じ状況が起こったとき、どうするだろうか。

とりあえず弁護士には相談するが、どんな準備ができるだろう。

アプリのストアでの公開・非公開という生殺与奪権を握っている相手にどんな準備ができるだろうか。

やり方がうまいよな。

今のスマホに搭載されている便利機能、数多の小規模開発者が需要を掘り起こしてきたのだろう。

みんな同じような経験をしたのかもしれない。

今使っているそのスマホの機能、こんな経緯を経て搭載されたのかもしれない、とみんなが思いを馳せてくれると嬉しい。

僕はというと、アプリを公開してからスマホに標準で搭載されるまでの間のアプリストアでの売上と、こういう話を方々でできるというちょっとしたメリットのみを得ただけだ。