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2011年、一家で滋賀に移住した。
震災と原発事故で、このまま埼玉で子育てすることに不安があった。
「東京」というシステムに、もう疲れきっていた、というのもある。
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滋賀はとても住みやすかった。
水も野菜も美味しいし、人とのつながりもたくさんできた。
ただ、「仕事」はあまりうまく行かなかった。
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フェアトレードショップをはじめ、ウクレレレッスン、コーヒー出店などなど、いろいろやった。
小さな規模のイベントも、できることはやってみた。
うまくいったものもあったけれど、「稼ぎ」にはならなかった。
まあ、そもそも「儲ける」ためのもの、ではなかった。
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結局、滋賀には7年半いた。
今は京都府京田辺市に、2019年から住んでいる。
滋賀で組んだバンドは一応続いていて、今も年に何度かお誘いを受ける。
コーヒー出店やウクレレレッスンも、単発ではやったけれど、定期的にというのはなかなか難しい。
そんなわけで、自分の今の「仕事」は、「主夫」ということになる。
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それから、歌をつくること。
バンド活動も、ソロでも、最近はオリジナルソングを中心に歌う。
「シンガーソングライター」なのだけど、何となく自分にはしっくりこない。
友人の発した言葉を、「吟遊ソングライター」と聞き違えしたことがあって。
その造語にピンときて、以来それを使っている。
現代の「吟遊詩人」になれたらいいなと思う一方で、そこまでの覚悟があるのか、という問題もある(「吟遊詩人」の定義にもよるが)。
それに、自分の「仕事」だとは、今のところ胸張って言えない。
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塩見直紀さんが提唱した「半農半X」的に表現するなら。
タイトルにもしたが、半主夫半吟遊ソングライター、ということになる。
語呂がよくないし、これは「半農」がキモなので、本来の趣旨から外れているだろう。
この言い方を、自己紹介に使ったことはない。
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でも、意識としては常に、この感覚があるように思う。
それが、今の自分にとっての、身の置き場所なのだ。
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◇ AKUTA Tomonosuke ◇
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