嘘彈き

芥 知之介
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4月1日。

エイプリル・フールって、好きじゃない。

嘘をついていい日、だなんて、それこそ欺瞞だ。

一年間全く嘘をつかなかった人が、その日だけ盛大に嘘を言っていいという、お祝いの日であれば話はわかる。

嘘に塗れた世界に、エイプリル・フールなんて冗談、笑えない。

デマの方が広がりやすく、そのくせ消えにくいという。

いわゆる「デジタル社会」となって、それはますます手に負えなくなった。

広告や宣伝なんて、巧妙な嘘合戦で、メディアはいつの間にか「虚構新聞」を追い越している。

今の世界は、嘘をもてあましているんじゃないか。

昔から、嘘はキライだ。

自分が嘘をつくのが下手だから、というのもある。

一方で、意図せず「口から出任せ」になってしまうことがよくある。

「出るに任せて」いると、自分でも思ってもみないことを口走ってしまって。

結局はそれも、「嘘」ということになる。

嘘をつくのは、本意じゃないなら尚更、心苦しい。

かと言って、自分で「センサー」を切って、ラクに嘘がつけるように、なんてのはもっとイヤ。

自分を偽るのは、はっきり言って最悪の嘘だ。

でもだからこそ、「嘘」というものに興味がある。

1〜2年前、『嘘彈き』というオリジナル曲をつくった。

嘘をつくことは、心の内を傷つける。

ただし、傷つくことは悪いこと、とは限らない。

それを癒すことで促される成長もある。

無自覚な嘘は、それがないからタチが悪い。

『嘘彈き』は、「嘘」の代償についてを書いた、ような氣がする。

平たい言い方をすれば、「いい嘘」というのもやはりあるようだ。

そのあたりは、また新たにつくる曲のテーマに、できるかもしれない。

 ◇ AKUTA Tomonosuke ◇

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@mrukuleleman
吟遊ソングライター