みんな大好きウェス監督の代表作
「なんかめっちゃ色彩可愛い」でおなじみウェス・アンダーソン監督の代表作である今作『グランド・ブダペスト・ホテル(原題The Grand Budapest Hotel)』は2014に上映され、ゴールデングローブ(アメリカ内の映画人気投票的なヤツ)撮った映画です。オスカーも取ってるんだって。すげ〜。
これ、私はまあまあ好きだったな(まあまあかい)程度の映画なんだけど、結構人気が高いので紹介しちゃおうかな。ウェス・アンダーソンは最近だと『アステロイド・シティ』(時期が合わなくて見られなかった)とかやってるバリバリ活躍監督だし。ちょっとうろ覚えの記憶なのでアレだけど…
あらすじ
物語は老いた主人公、ゼロ・ムスタファの口によって語られる。
1968年、架空の国ズブロフカのホテル「グランド・ブダペスト・ホテル」。ゼロは初代コンシェルジュ、グスタフ・Hの元で使用人として働いていた。ゼロはグスタフ・Hの元で可愛がられ、重用される。
ある日、とある大富豪でホテルの常連客であるマダム・Dの訃報をきっかけに、二人は血みどろの遺産相続と冒険に巻き込まれていく…
可愛い色彩と神経質なまでの画面作り
マジで騙されたと思ってGoogle検索して欲しい。本当に可愛いんです、色彩が。
グランド・ブダペスト・ホテルの外壁はふんわりした可愛らしいパステルピンクに白の装飾がされていて、エレベーター内部は真紅になってて…ってこの時点でかなり可愛い。あと劇中で出てくるお菓子のパッケージ(これがかなりキーアイテムになる)は、同じくふんわりしたパステルピンクに水色のリボンがかかってて相当可愛い。こればっかりはGoogleで検索してください。載せられないので。
可愛いパステル調中心の色と同じくらい『グランド・ブダペスト・ホテル』できになるのは、もはや神経質ともいうべき画面にある。とにかくこの作品、画面作りがめちゃくちゃ意識されて作られている。正直くどいレベルで人為的かつ対称性を意識したカメラアングル・キャラクター設置・背景美術でだんだん眩暈がしてくる。
これらはどうやらウェス作品に共通の特徴らしく、ちょっと前に渋谷でウェスっぽい写真展なるものが開催されたくらい愛好家にはたまらないらしい。
わたしはあまりにも不自然すぎて映画というよりは集団行動みたいな劇を見ている気持ちになって没入感が削がれてしまった。だが、画面の一つ一つの絵画性の美しさには目を見張るものがあるので、鑑賞の価値は十二分にある。
この映画、じつはアマプラのprime対象映画です。やったー!気軽に見られる映画!!!
マジで一見の価値はあるし、この作風が好きなら『フレンチ・ディスパッチ』とか『ダージリン急行』(私はこっちの方が好みだった)とかの他の作品もぜひ見るべき!
同じ監督っていう縦軸で映画を見るなら断然おすすめの監督です、ウェス・アンダーソン。
ぜひ見てくれ〜!
古き良き時代を懐古する(ネタバレあり)
ここらはちょこっとネタバレが入ります。
見たくない人はここでバイバイしてね!
作中でグスタフ・Hは、徹底して変人偏屈極まりないけど"紳士的"な人間として描かれ、主人公ゼロも彼を「古き良き時代」を生きる人と回想している(確か…)。
作中で、移民であるゼロは電車の中で危うく身分が保証されないものとして逮捕されかけた。しかしグスタフが特殊警察の中にいたかつての知り合いに融通してもらったことで、ゼロの安全は保証された、というシーンがある。
古き良き時代は、もっと全体的に緩やかで、融通が利いて、人情のようなものが存在する──
こういった言説は、「かつての日本」を語る時にもよく出てくる。お隣さん同士の関係性が濃くて、お互いが互いを助け合って生きている社会。ルールは曖昧で、だからこそグレーゾーンが存在してしまっている社会。現代になって、私たちは何を得て何を失い生きているのだろうか。そんなことを少し考えさせてくれる。
とはいえ『グランド・ブダペスト・ホテル』はがっつり娯楽作なので、あまり肩肘張らずに見ることができるのもおすすめポイントだ。ipadやらpcの傍に紅茶とお菓子なんか用意して、ゆっくりウェス・アンダーソンワールドに浸りながらぜひ鑑賞して欲しい。