およそ2ヶ月ぶりに、パートナーとデートできる日。
朝ごはんにケールのサラダとライ麦パンを食べた。ひさしぶりのトーストがとってもおいしく感じられて、オリーブオイルをたっぷりつけて夢中で食べた。本当においしかった。しみじみ味わっておいしいというよりは、推進力のあるおいしさ。
シャワーを浴びて髪のセット、メイクまでして(週末は8時半までに終える必要がある)、コーヒーの入ったマグカップを持ってベッドに戻った。
食器を洗いつつ、食器を拭く母に「デートが16時からになっちゃった……」とこぼしたら、「大丈夫!?愛されてる!?!!」とでっかい声で心配され、おもしろかった。朝ごはんを食べながらスマホをいじっていたら、昨日友人たちと遊んで終電を逃したため、デートを2時間遅らせてほしいと連絡があったのだった。もちろん愛されているのは分かっているのだけど、話しているうちどんどんいじけが加速してしまい、自分の部屋に戻ってきてからも自分の機嫌の悪さにやられて、ベッドにへたり込んでいた。自分の機嫌の悪さを自分ではどうにもできないあの時間、本当に苦しい。壁の一点を見つめ続けたり、ばたんとうつぶせになったままじっとしたりしても、身体のなかがぎゅるぎゅるしてこわばる。この機嫌の悪さもパートナーが悪いわけではないからと一人で消化しようとしたのだが、1時間くらいずっと泣きそうで苦しくて、限界だとなってパートナーに「すごくいじけちゃった」とだけ連絡した。そこからパートナーがやりとりしてくれ、集合時間と場所を決めたら気持ちが落ち着いた。わたしは事前にデートプランをいくつか提案していたのだが、パートナーから返事がないままだった。今日は雨だし16時からに変更してデートということで、もちろん提案したプランは使えないのだけれど、今日をどう過ごすか決めないまま当日朝を迎えたため、うっすらと「忙しいのはわかるし負担をかけたくないけど、どうするつもりでいるんだろう…… デートを楽しみにしているのはわたしだけで、考える気も話す気もないのかな」と感じてしまっていたらしい。パートナーが仕事のトラブル続きで忙しいのも分かっていたし、返事はいつでもいいよと言っていたが、自分でも気づかないくらいうっすらと……。今週のデートはトラブルによってなくなりかけたのだが、無事に会えることになったため、よりいっそう楽しみにしていた。だからこそ、それについて何もふれられないことが悲しかったし、寂しかった。それをそのまま話すしかなく、いっぱいいっぱいでメッセージを送ったら、パートナーはすぐに応答してくれた。話しながらやっと、「雨の日デートにどう対応したらいいか分からない」がこの混乱のいちばんの原因だったことが分かってきた。自分でもどうしたいか分からず困っていたと伝えたら、レスポンスしていなかったことを謝ってくれたうえで、「自分もどこに行きたいか分からなかった、それを表明して、一緒に悩めばよかった」と言ってくれた。ああそうか、一緒に悩みたかったんだ、と思った。ふっと身体のこわばりが解け、ほっと落ち着いた。やりとりのなかでこういうふうに寄り添ってもらえた瞬間、本当に安心する。パートナーは、「なんで全くレスポンスしていなかったんだろう……」と自分のことを不思議がっていた。忙しいだろうからと遠慮して、催促するなどのコミュニケーションを控えていたため、こういうふうに急にわっと出てしまったのかも。ただ待つだけではなく、素直に応答を引き出すやりとりができていればよかったな、と思った。
パートナーとやりとりしてよかった、何時間も苦しまずに済んだ。本当に怒らずに話を聞いてくれ、受け止めて返してくれ、ありがたい。いつも、混乱した自分のままでやりとりすることを躊躇する(それ自体はする必要がある)けれど、はやめにさっと出しておくと、二人で一緒に解決することができる。一人でどうにもできないとき、二人の間に置くと、あっという間に解決してしまうことが多い。今のところ、俎上に載せて悪い結果になったことはないので、これからも力を借りることを選ぶと思う。
すっかり落ち着いて、ハイビスカスを中心としたハーブティーを淹れてゆっくりと飲み、本を読んで、日記を書き、掃除機をかけた。そうこうしているともう午後に。ベッドの上で好きな洋菓子店の焼き菓子(ラスク)を頬張った。着替えてアクセサリーをつけ、デートの準備は万端だ。レインブーツを履いて玄関を出た。
ブックポストにやっと本を返して待ち合わせ駅に向かった。早く着きすぎたので、駅のホームのベンチで日記を書いてから改札を出た。
開口一番「朝はごめんね」と謝ってくれるパートナー(※悪くない)の懐の深さよ。あたらしく買った服を着てきていて、それがとっても似合っていた。かれの好みなのだろうな、と分かるシャツで、それ含めて嬉しくなる装い。およそ2ヶ月ぶりに会って、いちばんにぎゅっとハグをした。
雨で静かな街を歩いて、フォロワーさんが行っていたので気になっていたカフェへ。店内も素敵で、もっと写真を撮ればよかったが、目の前の現実に夢中だった。
パートナーはほうじ茶とミルクのアイスクリーム、わたしはスコーンと一緒に、アイスのカフェラテを頼んだ。エスプレッソの苦味と酸味がすっと通っていながらもまろやかなミルクに着地する、とっても美味しいラテでした。やったー!スコーンはびっくりの大きさで、ブラックペッパーと蜂蜜と一緒に食べた。外はざくっとしているが、中の食感は他のスコーンにはない感じでまとまっていて(言い方へんだけど、ぷるんとしている)、楽しくもぐもぐ食べた。アイスはふわっと親しみやすい味。
たくさんおしゃべりして、飲み物をおかわり。パートナーはスパイスのきいたコーヒーミルクを、わたしはたっぷりの熱い紅茶を注文した。
上手い・下手って一体どこから来るのだろう、と話した。上手い人は試行回数が多いのだと思うが、トライすることを楽しむにしろ努力するにしろ、試行回数を担保するのはやはりセンスなのではないか…… と言ってみたところ、パートナーは「モノマネのセンスだ」と言っていた。なるほど、確かに上手い人にはモノマネができる人が多い。その先に「自分のものにする」という上手さの広大な領域があるにしても、最初は「まなぶ」とは「まねぶ」ことなのだなあ、と思わされるほど。
この前わたしが話していた合唱団の仲間は歌が上手いのですが、「上手さは分けてあげられないからなあ」と言っていたらしく、感心して「不遜だなあ!」とにこにこしちゃった。超最高。大好き。
パートナーが突然「似てる……」と笑いはじめたので何かと思ったら、二人とも上質なものにしか満足できないところが似ているとのこと。せっかく歌うなら、自分がいいと思う人たちと歌いたいよね。わたしたちがやりたいのは、それぞれがめいっぱい自分の音楽性と技術に責任を持ち、その先で音楽を作り上げること。それぞれの良さでもって音楽に貢献し、また周囲から刺激を受けてみずからも高められること。ほんとうに理想が高いが、そのほうがわくわくするし、ぜったい楽しいんだもん。
外との境がシームレスなカフェだったので、滞在する間にかなり虫に刺された。「かゆい……」と顔をしかめるわたしを見て、「……なんか今の可愛かった」と聞き取れないくらい小声で言ってきたパートナーがかなりおもしろかった。よく分からないが、うれしいね。ありがとう。ちょっと照れたので大声で笑ってしまった。帰り道でも、「ジョジョで秘密を言い合う場面があるんだけど……」と言っていてなおさらおもしろかった(ご存知の方、そういうことです)。
歩いて大きめの駅に向かう途中、古本屋さんがあったので寄った。人に貸したまま返ってこない『三体』がハードカバーで600円と文庫より安そうだったので買った。Ⅲ未読なので、読み返しちゃお。鵜飼哲『応答する力』があまりにもおもしろそうで後ろ髪を引かれたが、図書館にあれば借ります。
いちばん楽しかった雨の日ならではのところは割愛。「雨の日はこうじゃなくちゃね!」と言い合った。
来週も会えるからね、とにこにこして、ぎゅっとハグして手を振って解散した。
帰宅したら、時間が早かったので母に「早っ!!!!!大丈夫!?!!?!!デート楽しかった????!!!!本当に!?!!!!?!」と大声で心配されて、これまたおもしろかった。「えー、名残惜しいから映画でも観る、とかならないの?全然分かんない……」と困惑し、そのまま「もし何か話したかったら言ってね」と寝室に去っていった。確かにデートするって言った子どもが9時半に帰ってきたら、ちょっと驚くかもしれない。わたしたちは大丈夫です。ダルカレーとビリヤニを食べてすぐ寝た。