2024.9.15

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朝一で「VIRONのクレープでも食べに行く?」と提案したら乗ってもらえる、わたしたちのバイブス。VIRONを通るときは毎回他のものを食べに行く途中だったり、もうおなかいっぱいだったり、時間的に余裕がなかったりで、「一度は食べてみたいねえ」と通るたびに言っていた。着いてみると朝食セットもあったが、何組か並んで待っていたのと値段にびびり、テイクアウトに。コンテチーズとハムを挟んだバゲットサンド(1500円、高い!)を二人で食べた。歯ざわりよく噛み切れるバゲットサンド、はじめて食べた。バターの香り、コンテチーズ(パートナーの大好物)の苦味、小麦の旨味。これは……… 美味しいわ………。値段にびびりはしたけれど、確かにめちゃくちゃ美味しい。てっきり土地代かと思ってたよ。テンションが上がって、クレープも一人ひとつずつ頼んだ。パートナーはエシレバターとお砂糖のスタンダードなもの、わたしは塩キャラメル。もちもちの層になったやわらかなクレープ、いままでに食べたクレープとはまるで別物で、感動すらした。おいしい!パートナーのは溶けたバターの香りとじゃりじゃりのお砂糖の食感がうれしく、わたしの塩キャラメルはほろ苦いコクのある香りがぶわっと広がって凄まじかった。もう最後の方はバターやら砂糖やらがとけとけのしみしみになって、クレープの層の間からあふれ出てくる。最後の方は甘さにやられ、「半分こでよかったかも……」になったが、それでも二種類の味が食べられたことは大きな収穫だった。また通りがかったら食べたいクレープ(誰かと一緒に通らないと!)。値段は高いものの美味しい店、という認識になったため、明日の朝ごはん用のちいちゃなパンをお土産に買ってから帰った。合計3回の会計。頼んだものの総額を考えれば、イートインの朝ごはんも割安だったかもしれない、と後ろ髪引かれつつ、やはり朝から2200円という巨額を払う勇気を出せるかどうか。いつのまにか1800円も出していたのですが……。

適当に入ったコーヒー屋さんで眠気とたたかいつつ、来月の交際2年記念日の計画について話し合って時間をつぶした。ひさしぶりに映画でも観たいね、と調べてみたりして。わたしとパートナーはアクティビティをやらない二人なので、デートでは服を見に行ったり散歩したり、食べものや飲みもののお店を目当てにしたりすることが多く、たまに映画、ごくたまに美術展、という感じなので、記念日という「特別な日」に何を配置するか、めちゃくちゃ迷ってしまう。たまたま今回のデートの流れで行きたいネパール料理屋さんが見つかって、そこのコースにしたいねということで二人の心が決まった。相変わらず、食べるものを最初に決めてからあとのデートコースを考える人たち。

そんなこんなで時間をつぶしたのにも理由があり、指輪の試着・受注会に行くためでした。遠距離に住んでいるため、一緒にいない時間も存在を身近に感じられるお揃いのものがほしいな、と思っていた。しかし、指輪をつけることをいいなあという気持ちと、ありきたりすぎやしないかという気持ちがないまぜになる。指輪が象徴するパートナーシップの形式とその不文律のような内容にはすんなりと頷けず、自分たちの関係性と指輪の存在に整合性があるのか、とつい問うてしまう。自分たちで調整しつつ関係性を築いているのであるが、それが「指輪に象徴されるパートナーシップ」に収束してしまうことの悔しさと、少しのおそれ。指輪ではないおそろいのものを買う手もあったのだけど、毎日身につけられないものも多い上、やっぱり自分たちの満足だけでなく社会的に「わたしたちはパートナーです」と承認されたい気持ちもある。アナーキーにはなりきれないのだ。購入する指輪を調べているうち、ペアリングを探すのが難しいことに気づいた。パートナーシップのための指輪といえば、婚約指輪や結婚指輪になってしまうのだ。価格帯もぐんと高くなる。指輪のみがパートナーシップの証明を独占的に象徴するためなのか、それとも……。そんなときに友人から教えてもらったブランドが、ずっとSNSで製作過程なども見ていた方のリブランド(名前が変わった)されたところだった。試着もできる受注会なんてちょうど行けるタイミングもそうないということもあり、別の約束があるパートナーにちょっと無理を言って予定を捩じ込んだ。雰囲気のよいコーヒー屋さんが立ち並ぶ通りを抜けて、「先に移動しておいてこのへんのコーヒー屋さんで時間を潰せばよかったね」と言いつつ、ゆっくり歩いても時間ぴったりに到着してしまった。ほぼすべての指輪を試着して指の感じを確かめ、大きな鏡の前に立って自分の姿との相性を見て、最終的にはパートナーが断然惹かれたという銀と真鍮の指輪に決めた。銀と真鍮の指輪はそのブランドのアイコニックなもの。真鍮のアクセサリーを他にもいくつか持っているので、それらと一緒につけても良さそうだし、他の指輪がシルバーであれば真鍮部分を手のひら側にして色合いを合わせることもできる。わたしはなんでもツーウェイが好きなので(お得だから)、それもあっていいねと賛成した。きっちりのサイズをはかり、付けっぱなしにするためのぴったりめの号数を選んで注文。届くのは記念日には間に合わないが、11月くらいとのこと。楽しみに待っておこう。指輪が指し示すものに思うところはあるものの、わたしがクィアである限り、関係性もクィアなものなのだ、と思いなおす。わたしのクィアネスは毀損されない。誰にも、何にもうばわれない。それどころか、わたしのクィアネスが、あたらしい何かを生み出してゆく。そうやってクィアな関係性に他者を巻き込む。たいせつな他者を。(わたしのパートナーも大概クィアだけどね!)

駅改札まで送ってもらい、首に腕をまわして背伸びしてハグをしてから別れた。振り返ると手を振ってくれているパートナーのありがたさを噛みしめる帰路。

帰ってきて、眠かったのですこし横になったあとは、パレスチナへの寄付になるヨガレッスンを受けた。全身のフローというよりは、ゆったりと呼吸をして、身体をひらいてゆくようなヨガ。ずれたりぶれたりしていたものが、いろんな方向にやわらかく揺らいで、だんだんと中心に収斂していくような、そういう重心のとりかた。敬愛する友人と、その友人を通して世界と繋がることができて、しばし安心する時間だった。これからも、自分のためにも、パレスチナの解放と平和のためにも、続けていきたいな。

早めの時間からごはんを作って食べた。冷蔵庫のものをほとんど使い切った。

  • 十穀米

  • トマト切っただけ

  • 切り干し大根とキャベツの胡麻おかかサラダ

  • ひじきと大豆の煮物

  • 鹹豆漿にキムチ

  • きゅうりとにんじんのお漬物

最近は2品くらいある程度の手間をかけて作って、2品くらいぱっとできるやつを作っている感じ。腹十分目まで食べてしまうので、今日は八分で抑えた。そうしたら寝る前にお腹がすいて、結局またおかずをもりもり食べる羽目に。胃腸への負担、申し訳なくなる。

食後はやわらかくみずみずしい梨をむいて、ハーブティーを淹れた。

無料で配信していた『マイスモールランド』を観た。クルド人差別が激化していて、びっくりするようなところでヘイトスピーチを見かけることもある。よく市民運動が上映会をしているが、ついぞタイミングが合わなかったので、ここぞとばかりにタイミングを掴んで観た。ストーリーとして入ってきやすい上に、きちんと不条理が分かりやすく描かれている。入国管理局、警察、入管法制がひどすぎる。馬鹿馬鹿しいほどの制度の不条理。腹が立って、悲しくて、おいおい泣いた。途中性暴力被害に遭うところでは本当に悲鳴が出た……。色々な問題が主人公の肩に負わされているさま(ヤングケアラーでもある)、複層的(お父さんが家父長的だったり、妹が自己責任論を発したり、他にもさまざまな人物が様々な側面を持っていて、様々な反応を見せまた応答する)に描かれる登場人物たち。生々しい傷。「見ろ!」という叫び。「見ろ!」。わたしが映画のなかにいたら、どんな登場人物になっていただろう、という近さ(本当は、映画のなかに描かれていた人たちがわたしのすぐ近くにもいるということなのだ)。改悪された入管法の今後の動きは見ていかないとと思ったし、デモにも参加したいし、もっと知りたい。本を読んだり講座を聞いたりしたのでざっくりした知識はあるにはあるのだが、映画を観てあらためて憤り、「みんなとここにいたい」だけなのにすべてを奪われ、制限され、拘束され、差別され、追いやられる、そんな人々のそばに立たなくては、と思わされた。持続的にやらなければね。