誕生日当日の昨日、母がやっているヨガスタジオでワークショップがあり、世界中を旅しているひとが来ていた。天然石を編んでいるひとで、作品や石たちを展示していたのだけれど、誕生日だということでわたしに石をプレゼントしてくれた。昨日、友人と食事に来て席に着いたところで母から電話があり、「誕生日だから石くれるって言ってるよ!」と言われて、「ああ、やっぱり!」と思った。その日は朝からそんなことを言ってもらえる気がしていたのだ。しかも、編んだものではなく、そのままのもの、というところまで、ぴったり予感のとおりだった。ということで、その方にお任せして選んでもらった石が、机の上に置いてあるのを見つけた。レースアゲートのような層のある、きれいなアメジスト。うれしくて、透明な日のひかりのなかでくるくる眺めた。

誕生日の翌日はすぐに母の日。母の日っぽいことを年々やらなくなっていたが、今年はお目当てがあった。昨日、お庭のパーティーに行く前に、腹ごしらえにりんごのクレープを食べようと大好きな近所の洋菓子屋さんに寄ったところ、ガラスケースの中に、見つけてしまったのだ……!スポンジ部分とおんなじ大きさほどの、ふりふりのピンクのお花がのったケーキ!!大きなカーネーションのケーキだ、とひと目見てきゅんと心奪われ、「これは、明日買うしかない………」と決めた。寝て起きて、朝いちばんに「今日はあのケーキを買うぞ!」と飛び起きた。なんてうれしい目覚め!
開店時間は10時。10時ぴったりくらいに洋菓子屋さんに着こうと、早々に身支度を終え、家事もやった。
ケーキを買いに行くまでには(気合いが入りすぎて)まだまだ時間があったし、もらった誕生日プレゼントたちが嬉しかったので、さっそく部屋の模様替えをした。昨日もらったサーモンピンクのカーネーションを生け、祖母の形見のレースのハンカチを敷いた。


友人にもらった本やカードを本棚に飾ったり、壁に貼ってあるものを貼り替えたりして、すこし気分も変わった。

部屋全体に統一感はあまりないけれど、好きなものが寄り集まっている姿がとても好き。各場所ごとになんとなくテーマがある。お気に入りのものがぎゅっとなっていると、ふふふと嬉しい。
模様替えを終え、今日の気分にぴったりくる服をあれでもないこれでもないと選んでいたら、いい時間になってしまった。結局、濃いピンク色のワンピースにデニムを合わせ、シルバーのバレエシューズを履くという、パワフルな装いで家を出た。歩いて洋菓子屋さんに到着すると、10時6分。少し開店時間を過ぎてしまった…… と思ったら、すでにわたしの前に10組も並んでいた。恐るべし。後からもどんどん人が来た。

並んだところに花壇があり、ゼラニウムや薔薇がぽんぽんと元気に咲いていた。わたしの服も負けじと良い色をしていたので、普段は行かない向こう側(列が長くないとそちらまで行かない)にあった花壇に出会ったことで、少しばかりそわそわしていたがこの服を着てきて良かった!と思った。
列が長かったので、「あのケーキ買えるかな……」とそわそわどきどき待っていた。出てくるひとたちが抱えている箱を「あのケーキが入っているか、それとも他のものか」とまじまじ見つめて(ごめんなさい)、おそらくまだ買えそうだ、と指折り数えていた。順番が近づいていき、外から店内が見えてまだ3つほど残っているのを確認し、ほっとしてから入店。あまりにもそのケーキがかわいくて、ガラスケースの前で小躍りしそうになった(たぶんしてた)。結構長く悩んでいる人がいる横で、昨日から心に決めていたわたしは「これをお願いします!」とはきはき注文。箱に詰めて渡してもらい、そっとドアを押してお店を出るまで、何ともあざやかに時間が流れた(店員さんの手際のおかげ)。
ケーキを持って歩いていると、かならず岡野大嗣の「倒れないようにケーキを持ち運ぶとき人間はわずかに天使」という歌を思い出す。わたしは天使、わたしは天使……。そうっと、ゆっくりと帰路を歩いた。
冷蔵庫にケーキを入れ、お昼まで待って、母と母のパートナーとケーキを食べた。大きなピンクのカーネーションのケーキは、昨日もらってきたカーネーションとそっくり!ケーキのスポンジ部分と、お花の部分が、ほぼ同じ大きさなのもすごい。かわいいし、大きいお花ってうれしい!

こんなに素敵なケーキを思いついて作れるなんて、本当にここのパティシエさんってすごい。何よりも、ここのケーキは感嘆がもれるほどおいしい。はじめて食べたとき、衝撃を受けた。このカーネーションのケーキも、見た目がこんなにかわいいのに、食感を含めた味もすごかった。花びらの部分はチョコレートでできていて、花びらの土台はホワイトチョコレート。その下にスポンジがあり、間にクリームと苺が挟んである、という構成だったのだが、すごくシンプルでありきたりな組み合わせだというのに、シンプルだからこその丁寧さ、端正なこだわりがびしばし伝わってきた。まず花びらのチョコレートはたとえば苺の香りが強いということもなく、控えめにつくられていた(たぶん、苺味でもない)。ホワイトチョコレートもくどくなく、一緒に淹れたコーヒーにコクを足してくれる。どちらも嫌味のないまっすぐさがあった。何より衝撃を受けたのは、スポンジの食感。しっとりさが飛び抜けている。きめこまやかで、弾力があるというよりは、しっとり、ほろり、とやさしく溶けていき、すっきりとしたクリーム(わたしはクリームの匂いが強いのは苦手)と小粒の酸味がありつつじゅわっと熟している苺が一体となって、口のなかがしあわせでいっぱいになる。こんなにしっとりと軽いショートケーキは、食べたことがない!苺も小粒のものがごろごろ敷き詰めてあって、クリームはその間を埋めるようにぽんぽんとのせただけ、というような感じだった。クリームがぎっしりで、その間に苺がちょいちょいといれこんである、というのとは全然違う。たっぷりの苺と、それをきもちよく食べられるクリームの軽さと物理的な量、とびきりのスポンジ。すごい、すごすぎる……。それでチョコレートに戻ってかじると、それがまた調和していておどろく。こんなふうに全体が調和するケーキって、ほんとうにすごい。朝並んで買えてよかったあ!
午後は鍼灸に行った。入り口のところに薔薇がたくさん咲いていて、わあっとなった。

めずらしく眠くて、施術中にうとうと、すこしだけ寝てしまった。鍼灸に行くと、お灸や鍼、湯たんぽなどをしながら、時間をおくことがある。その間、わたしはただそのまま休んでいるしかない。「ただ休む」ということは、日常生活ではすごく難しい。音楽を聴いたり動画を流したり、スマホを眺めたりをついついしてしまい、ただ自分の身体の感覚に戻っていくことがどれほど難しいかわからない。月に一度、身体をtreatしてもらいながら、リラックスして「ただ休む」ことができると、ああ、すごいなあ、と思う。いつも施術が終わると、身体が軽くなって、背筋がすっと伸びる。深く休むって、こんな感じなんだ、と思う。もちろん身体の調子が悪いときは、「劇的に良くなりました!」というわけにはいかないけれど、じっくり、ゆっくりする時間を取るだけでも、ぜんぜん違う。もっと何も考えずに、休む時間をとったほうがいいんだろうなあ、と思う。しかし、たとえば瞑想をやろうとしても、「じっとする」ことにはわりとコツがいるというか、その姿勢を保つまでに必要な、こころと身体の準備みたいなものがある。リラックスするためには、ただ身を横たえるだけでは足りなくて、身体をあたためたり、部屋をいい香りにしたり、ストレッチやマッサージ、軽い運動などをしたりして、リラックスできる状態に身体をもっていかないといけない。人間って、気が散るようにできているんじゃなかろうか。でなければ瞑想が知恵になることもないのだし……。何にもせずに「ただ休む」時間をつくりたいな。やっと、自分の身体をケアすることで、心を落ち着ける、ということをやりたくなってきた。
1時間半くらいじっくり鍼灸をしてもらい、帰ってごはんをつくって食べて、すぐに眠った。18時半くらいから少しお昼寝するつもりが、起きたら夜中の2時だった。そこからまた寝て、朝までぐっすり、合計で11時間くらい眠った。こんなにたくさん、深く眠れたのもひさしぶりだったかもしれない。鍼灸を受けた後はよく休むと効くらしいので、こんなに眠れたのはとってもいいことだ。